農業を魅力的な産業にしたい!
(株)井出トマト農園
「6次化は価値の創造」と仰るのは(株)井出トマト農園の井出社長。今回は6次化がもたらした効果等を伺いました!
加えて、若手新入社員さんに就活秘話を伺いました!
(※当社発行の農業フリーペーパー「VOICE」44号/2018年秋号より転載)
農業を魅力的な産業にしたい!
●代表取締役 井出寿利さん
日本大学卒業後、不動産会社へ就職。新人トップセールスを樹立。2年後に就農。前職の経験を活かし顧客目線の商品づくり等に努める。07年に経営継承し、14年に法人化。
―貴社の農業および6次化に関わる事業内容を教えてください。
当社はトマト専業の農業法人で、生食用トマトの販売のほか、トマトジュースやケチャップなどトマト加工品の企画・製造(※長野県にある農産物加工場に委託)・販売、トマト狩り体験等を行っています。私は2006年に父が経営する当社に就農し、2007年に経営権を譲り受けましたが、6次化は私が新たに始めた事業です。
―そうなのですね。なぜトマトの加工を始めようと思われたのですか?
ジュースやケチャップの人気商品ができたきっかけは3つあります。
1つ目は、直売所に来てくれたお客様に、「トマトジュースってどうやって作るの?」と聞かれたことです。その時に、「トマトジュースを作ったら売れるのかもしれない!」と気が付きました。
2つ目は、2009年に3Lサイズの特大トマトが3トン(150コンテナ分)も出来てしまったことです。大きすぎるトマトはJAでは買い取ってもらえないし、直売所でも売り切れない、かといって全て廃棄するのも大変…。どうしようかと困っていた時に、「それならば、以前から考えていたジュースに加工してみよう!」と思い、加工を始めました。
3つ目は、子供に食事を与えている時にふと、「なぜ自分の農園でトマトが採れるのに、トマトケチャップを買っているんだろう?」と思ったことです。その時、「自分で作った無添加で最高に美味しいケチャップを食べさせたい」と思い、自社のトマトからケチャップを作ることを思いつきました。
―トマト狩りを始めたのは?
直売所に来てくださるお客様に、「ハウスの中のトマトを見せてほしい!」と言われたことがきっかけです。トマト狩りはいろんな年齢層の人が楽しめますし、これをきっかけに初めてお越しになるお客様も多いので、トマト狩りの楽しさにはまってもらい、商品を買ってくださる方が増えたらいいなと思います。
―お客様の意見を参考に、6次化を始められたのですね!
はい。私は、生産者はお客様のニーズに合わせて生産をするべきだと思っています。農業者の中には「消費者より生産者が偉い」という考え方の方も確かにいますが、私は逆で、お客様が商品を食べた時の感動が一番大切だと思っているので、お客様の意見は積極的に取り入れたいと思っています。
―ところで2014年に法人化されたとのことですが、ご苦労もありましたか?
組織作りにとても苦労しましたね。例えば初めのうちは、社員は質問があると全て私に聞きに来ていました。しかも毎年同じことを聞いてくるので、「これでは私の作業も進まないし、社員も成長しない」と感じ、作業内容を全て文字化・手順化し、クラウドにあげて、私がいなくても社員が作業ができる環境を作りました。また、クラウドにあげた内容の編集や新規作成は社員全員ができるような仕組みにし、皆で共有をしています。
また、先ほどトマト狩りを始めたきっかけをお話ししましたが、実は社員教育の一環でもあります。トマト狩りを通してお客様と接することで、社員はお客様のニーズを知ることができますし、目の前で「美味しい」と喜んでくれるお客様の声を聞くことで、やりがいにもつながります。実際、トマト狩りの案内役をした社員は今のところ離職していません。
―6次化や法人化をしたことで、貴社を志望する人は増えましたか?
そうですね。「色んなことが学べる」と思い志望してくれる人が多いです。志望者のうち新卒者と既卒者は半々くらいで、選考でも平等に見ています。会社の将来を考えた時に、社長と社員を繋ぐような、リーダー的な存在になってくれる人がほしいので、そういう人を採用するようにしています。
―6次化を通して実現したいことや目標を教えてください。
お客様に対しては、「家庭料理を大切に、100年後にも残したい健康な食文化を作ること」が目標です。当社のケチャップを使った料理を提案し、簡単に使える無添加のケチャップとして流通させていきたいと考えています。
生産者に対しては、農業を「やってよかった」と言われるような魅力ある産業に変えていきたいと思っています。当社は6次化を始めたことで売上を伸ばすことができました。「現状維持は衰退だ」と言われるように、消費者の理想はどんどんあがっていくので、私たちもそれに合わせて変化していかなくてはなりません。農業をちゃんとした産業にできれば、社員のやりがいが増え、若い人ももっと農業に興味をもってくれると思います!
―お客様の幸せだけでなく、社員の皆様の幸せも大切にされているのですね!最後に、農業法人に就職したいと考えている大学生にアドバイスをお願いします。
一番一生懸命やった仕事が天職になります。学校を卒業してからも勉強を止めずに、一流の人材を目指してください!
若手社員さん就活秘話
●柄崎 恵里奈さん
<入社1年目> 販売部
―入社を決めた理由を教えてください。
私は大学卒業後、島根県の農家さんで2年間農業研修をし、その後当社へ転職しました。「農業をしよう」と思ったのは、就活で行き詰まった学生時代に、「自分が意味を持って働ける仕事って何だろう」「生きることに直結する仕事って何だろう」と考えた時に思い浮かんだからですが、文学部出身で農業の知識もなく飛び込んだ農業の現場で、農業の大変さを痛感しました!特に、農業現場では後継者が不足していること、「昔ながらの農業」を続けるだけでは廃れていってしまうこと、力仕事が多い現場では女性はなかなか活躍できないこと、などを知りました。
当社の存在は研修後の就農先を探している時に知り、常に新しいことに取り組んでいる姿勢や経営方針に惹かれました。また、当社には販売部と生産部があり、力仕事に自信のない女性でも活躍できる場がたくさんあるのも魅力の一つでした。
―普段の仕事内容を教えてください。
所属する販売部では、出荷計画を立てたり、在庫管理をしています。その他、近くの直売所に出荷へ行ったり、配送の人が休みの日はスーパーへ納品に行ったりもします。私はこれまで会社勤めの経験がなく初めての仕事ばかりなので、業者さんとのやりとりや在庫管理には今でも苦労しています。
―入社前後でギャップはありましたか?
就職前に、数日間ですが当社でアルバイトをしていたので、イメージと大きく異なることはありませんでした。
―今後の目標を教えてください!
将来的には独立して農家になりたいと思っています。もしくは後継者不足に悩む農家さんを引き継ぐことができたら素敵だなと思います。独立した時は当社で得た経験を生かして、新しい農業にチャレンジしたいと考えています!
―最後に、農業法人に就職したい大学生にアドバイスをお願いします。
農業は個人作業が主な仕事と思われがちですが、農業法人での仕事はチームプレーなので、コミュニケーションが大切です。イメージと実際の仕事とのギャップを埋めるためにも、まずは気になる会社にアタックしてインターンなどの体験をしてみるのもいいかもしれませんね。農業に携わる若い人がどんどん増えて、より面白い業界になっていくといいなと思います!
会社概要
会社名 | 農業生産法人(株)井出トマト農園 |
代表者 | 井出 寿利 |
所在地 | 本社:神奈川県藤沢市宮原2420 富士高原農場:静岡県富士宮市人穴756-2 |
設立 | 2014年に法人化 (※社長は井出家15代目。トマト生産は先代の実家で1930年頃から開始) |
従業員数 | 正社員8名、パートアルバイト45名 |
栽培面積 | 総面積 5.4ha(うち施設面積1.4ha) |
事業内容 | トマト生産(13種類)/施設栽培(ロックウール・ヤシ殻培地による水耕栽培)トマトの加工・販売、トマト狩り |
公式サイト
農業生産法人(株)井出トマト農園 ⇒ https://www.idetomato.com/
※記載情報は取材当時のものです。
※無断転用・転載・改変を禁止します。引用の際は、当社までご連絡ください。