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農業に関わる仕事

 農業界の仕事には、農業生産はもちろん、農業生産をサポートする様々な企業・団体があります。
 例えば、圃場を耕すトラクターや種苗、肥料、農薬、研究など現場に近い仕事はもちろん、流通や販売に関わる仕事、金融、メディア、などもあります。 具体的にどのような業種があるか見てみましょう!

業種について調べる

農業生産・農業経営
 「農業」とは、「土地を利用して作物の栽培または家畜の飼養を行い、人間にとって有用な生産物を生産する経済活動であり、そのような活動を行う産業」(世界大百科事典 第2版より)のことを指します。
 農業の経営体は、家族経営体と法人経営体(農業法人)の大きく2つに分けられます。
*農業法人は法人形態で農業を営む経営体の総称で、大きく会社法人(株式会社、合同会社、合資会社、合名会社)と農事組合法人に分かれます。その中でも農地を所有できる法人を「農地所有適格法人」(以前の名称は「農業生産法人」)と呼びます。

 農業を仕事にする場合は、「家業を継承する」「農業法人に就職する(社員として働く)」「新たに農業を始める(新規参入、または第三者経営継承による事業承継など)」の大きく3パターンが考えられます。
 ご自身の実家が農家か非農家か、就農したい地域や生産したい作目が決まっているか、社員として働きたいか新規就農(起業)したいのか、将来の夢が決まっていてそれに向けてのステップとなるのか、等によって選択方法や相談場所も変わってくるので、まずは自身の状況や将来の夢を考えてみましょう。
種苗
 種苗(しゅびょう)とは、文字通り、種や苗のことです。
 農業には欠かせない素材であり、農業界の“源流”に位置する業種ですが、そこから生産された農産物によって収益が変わることから、農家経営に直結する職業の一つであるとも言えます。
 種苗メーカーには、研究開発、種子生産、品質管理・物流管理、販売、経理、広報などの部門があります。
 このうち例えば、研究開発の大きな仕事は、品種改良(育種とほぼ同義)で、品種改良に携わる人をブリーダー(育種者)と言います。 また、販売されている種の多くは、採取農家に委託し生産されています。採取地は国内だけでなく国外にもおよびますが、採取地の詳細な場所や圃場はどのメーカーも企業秘密にしています。販売されている種は、品質の高さ(発芽率の良い、作りやすい、等)や安定供給が求められるため、種苗会社の社員が採取農家のもとへ伺い、植え方や生産管理のノウハウを指導することもあります。
農業機械(農機)
 農業機械とは、農作業に使用される機械のことです。代表的なものには、トラクターや田植機、コンバインなどがあります。
 農業機械メーカーは、これらの開発、研究、製造、販売などを行っています。農業機械を通して労働生産性、土地生産性の向上をはかり、農家さんの3K(きつい・汚い・危険)からの開放を目指しています。 なお、メーカーの中には、トラクターのロータリーや草刈り機の刈刃など特定の機械や部品に特化した企業や、産業機器の一つとして農業機械に取組む企業もあります。

 また、近年耳にする「スマート農業」ですが、農林水産省ではスマート農業を「ロボット技術や情報通信技術(ICT)を活用して、省力化・精密化や高品質生産を実現する等を推進している新たな農業のこと」と記しています。 具体的には、農機の自動走行、除草ロボット、農業用アシストスーツ、ドローンの活用、スマホやクラウドによる作業管理、などがあります。
 こうした機械やシステムの開発・研究には、既存の農業機械メーカーはもちろん、異業種やベンチャー企業が参入している事例も多くみられます。 また、稲作・野菜・施設園芸・畜産など専門的なものもあれば、農地のマッピングや作業日誌など汎用的なものもあります。
肥料
 肥料とは、植物を生育させるための栄養分として、人間が施すものです。
 「肥料取締法」第2条で、『「肥料」とは、植物の栄養に供すること又は植物の栽培に資するため土じように化学的変化をもたらすことを目的として土地にほどこされる物及び植物の栄養に供することを目的として植物にほどこされる物をいう』と記されており、 第2条2では、『「特殊肥料」とは、農林水産大臣の指定する米ぬか、たい肥その他の肥料をいい、「普通肥料」とは、特殊肥料以外の肥料をいう』と記されています。
 なお、肥料制度については度々更新されています。興味のある方は、農林水産省の「肥料」ページから詳細をチェックしてみましょう。
 
 植物の生育に必要な元素(必須元素)は17種類ありますが、その中で特に窒素(N)・リン酸 (P)・カリ(K)は外せません。 この窒素(N)、リン酸 (P)、カリ(K)は、必須元素のうち「肥料の三要素」と呼ばれるほど重要なものです。 具体的には、窒素(N)は葉や茎の生長に、リン酸 (P)は開花・結実の促進、カリ(K)は根の発育を促進する作用があります。
 肥料の原料はほとんどを輸入に頼っているため、肥料業界は世界の動向により大きな影響を受けるといわれています。 一方で、これら原料ではなく、未利用資源を利用した肥料製造の研究等も進んでいます。
農薬
 農薬は、農業の効率化や、農作物の保存に使用される薬剤です。
 農薬メーカーには、農薬部門を持つ総合化学メーカーや医薬品メーカーと、農薬を主とする農薬専業メーカーがあります。 国内市場は縮小傾向にありますが、新興国や途上国では経済発展や人口増加によって食糧需要が増加しており、海外での農薬関連市場の需要も成長すると考えられます。
 なお、農薬は、『その安全性の確保を図るため、「農薬取締法」に基づき、製造、輸入から販売そして使用に至る全ての過程で厳しく規制されます』。(農林水産省「農薬の基礎知識」より引用)
農業資材
 農業資材は幅が広く、灌水用資材や培土、土壌改良材、ハウス用パイプ、防鳥ネット、肥料、農薬、など農業生産に必要な資材を指す総称です。各社メーカーでは、各資材の研究開発や製造販売を行っています。
 資材専門で経営している大手企業は少なく、化学系の企業や機械メーカーが資材専門の部署を設立して売上げをのばしているというパターンが多いようです。近年では、植物工場等の高度な施設園芸が普及してきているため、これからも需要が広がるを考えられます。
流通・販売
 生産された農畜産物は、流通を経て消費者に渡ります。
 流通の形態や規模は様々です。最も大きな割合を占めるのは市場流通ですが、インターネットや流通網の普及とともに農業者が消費者に直接販売をする方法の増え、近年では農産物ECサイトの専門企業も増えてきました。
JA(農協)
 JAとは「Japan Agricultural Cooperatives」の略で、「農業協同組合」の英語表記の頭文字からつけられた総称です。
 農業協同組合は農業協同組合法に基づいて設立される協同組合の一つで、組合を構成する組合員は、農業を仕事にしている人(団体)である正組合員と農業者以外の准組合員に分けられます。 組合員数は令和元年度(2019年)で、正組合員417万9千人、准組合員628万37人です (「農林水産省 農業協同組合及び同連合会一斉調査」より)。
 JAは農業者をはじめ地域住民を総合的にサポートしています。 事業内容は、購買事業、利用・加工事業、販売事業、営農・生活指導、信用事業、共済事業、その他生活に関わる事業、など多岐にわたります。 それぞれの事業によってグループ内で組織が異なり、加えて、全国段階・都道府県段階・市町村段階に分かれています。