「美味しい」でつなげる地域と次代!
結城果樹園 結城翔太
(※当社発行の農業フリーペーパー「VOICE」39号/2017年夏号より転載)
プロフィール
氏名: 結城 翔太(28)
出身: 宮城県亘理郡亘理町
略歴: 「将来、農家を継ぐための勉強を」と考え、宮城大学 食産業学部で学ぶ。卒業後、アメリカでの農業研修に参加し、帰国後すぐに就農。現在、生産技術を磨いている。また、「宮城のこせがれネットワーク」代表を務めるなど、活動の幅を広げている。
「美味しい」でつなげる地域と次代!
結城果樹園 結城翔太
―就農のきっかけを教えてください。
大きくは3つあります。
1つ目はお客さんの影響です。うちはリンゴを中心に桃やサクランボ等を生産する果樹農家です。全て直売していますが、お客さんから「あなたの家のリンゴは他と違う。旨い」と言われて育ってきたので、「うちのリンゴ旨いんだ。じゃあやらなきゃ」って小さい頃から自然と思っていました。
2つ目は、大学3年生の時に遭った東日本大震災です。ここ亘理町は津波被害が大きく、幸いうちは被害がなかったのですが、亡くなった友人や全てを無くし「仕事を探しに行く」といって東京へ出る友人もいました。農業をしていくはずだった友人ができなくなり自分が残ったという状況で「何ができるだろう」と考えたときに、本気で就農を考えました。
3つ目は、海外農業研修での経験です。就農を本気で考え始めた時、たまたま大学で開催された海外農業研修プログラム(※)の説明会に参加して「行こう」と思い、卒業してすぐ19カ月間アメリカへ行きました。そこの農場主はすごく厳しい人でしたが、経営方法がすごく参考になり、彼の哲学や考え方にも大きく影響を受けました。そして、研修を通して「早く農業したい」と思うようになりました。
帰国後はすぐに就農し、いま5年目です。ちなみに、リンゴを始めたのはお祖父さんの代なので、僕で3代目です。最初からある 一番古い樹は、もう65年も経ちますよ。
―そうなんですね!ただ、それだけ古いと、樹の更新も必要になってきませんか?
必要ですね。どんどん樹を更新していこうと思って、樹と樹の間に小さい苗木を植えています。人間社会と一緒で、いろんな世代がいないと回っていかないんですよね。
―結城さんは世代交代されたのですか?
まだまだですよ、ペーペーなんで!たしかに、桃畑の一部は全部僕が管理したり、苗木をいっぱい植えたりしていますが、生産技術も勘も観察力も、圧倒的に足りません。
とはいえ、技術面で父とケンカすることもあります。父は職人気質で味にすごくこだわっていて、完熟ギリギリまで樹にならせて、味も蜜もしっかりのったところで収穫します。しかし昨年、「爆弾低気圧がこの地域を通る」という予報が出たとき、収穫目前のリンゴがあったんです。僕は「1年かけて育てたリンゴが落とされてはいけない」と収穫を提案しましたが、父は食べてみて「あと3日だな」と言い、結局その日は収穫しませんでした。幸い低気圧が少し逸れたので無事収穫できましたが、経営面と技術面から考えてどちらの判断が正しかったのか、今でも悩みます。ただ、やはりお客さんに評価いただいているのは「美味しい果物だから」なので、職人的な技術面はどんどん究めていきたいと思っています。
―ほかにも今後の目標はありますか?
技術面だと、剪定技術の向上です。この地域は土が肥えている分、美味しい実がなるのも樹が暴発するのも剪定次第。成功率を上げたいですね。あと、そういった農業技術や地域のストーリーを伝えて興味を持ってもらい、この地域へ来る人を増やしたい。来て見てもらって、食べて「美味しい」って言われると、その人が思っている以上に農家はパワーをもらいます。加えて、かつての僕と同じように、その声を聞いた息子が「継ぎたい」って思ってくれたら嬉しいですね。まだ1歳ですが(笑)。
―夢が広がりますね!最後に、学生に一言お願いします。
興味があることはやってほしい!できる人とできない人の差って、言い訳にエネルギーを使っているか、行動にエネルギーを使っているかの差だと思います。行動している学生はやっぱりすごい!もし躊躇している方がいれば、まずは一歩踏み出してほしいですね。
(※(公社)国際農業者交流協会の研修プログラム)
一問一答
Q 趣味は?
A 山登り。東北はいい山がいっぱいありますよ!最近は全然行けていませんが、息子も1歳になり歩けるようにもなったので、今年は行きたいですね。
Q 好きな言葉は?
A 「早く行きたいなら一人で行け、遠くへ行きたいならみんなで行け」という、アフリカのことわざです。一人だと出来ないことも集まると出来ることって沢山あるじゃないですか。色んなところで生きてくる言葉であり考え方だなと思います。
Q 好きな農機具は?
A 道具になりますが、剪定ばさみです。道具にはこだわっていますね。特に剪定ばさみはこだわっていて、父親の代から付き合いのある青森県の鍛冶屋さんに作っていただきました。
Q 好きな農作業の瞬間は?
A 朝と夕方に、日々様子が変わる畑をぐるーっと見る瞬間。朝日は気持ちいいし、夕日が沈んでいく様子もきれいだし。畑の中にいると気持ち良いですね。
Q 好きな異性のタイプは?
A 妻です!学生の頃、海外でバックパッカーをしている時に出会いました。妻は非農家・都会育ちですが、結婚して、友達もいない田舎で大家族の我が家に入りました。環境がかなり変わりましたが、順応して、家事も育児もして・・・女性の柔軟性はすごいですね。
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