有機農業×Iターン者がつくる次の世代
(農)無茶々園 ファーマーズユニオン天歩塾
「実家は農家じゃないけど、農業を仕事にしたい!」と考える学生さんも増えているのではないでしょうか。特に、非農家の方(家業が農家でない方)で農業をしたい場合、まずは農業法人で経験を積まれることをお勧めします!そこで、農業法人へ就職し農業をされている先輩方に、入社のきっかけや仕事内容、農業の魅力などお聞きしました。
(※当社発行の農業フリーペーパー「VOICE」34号/2016年春号より転載)
経験を積んでビジョンを固める
有機農業を軸に企業的な農業を展開している農事組合法人 無茶々園 ファーマーズユニオン天歩塾。ファーマーズユニオンの農場は愛媛県内の3ヶ所(松山市北条、明浜町、愛南町)にあり、Iターン・非農家の若者たちが元気に働いています。
今回は天歩塾責任者の村上尚樹さんはじめ、吉山毅さん、山本翔平さん、旅田昌典さんの3名に、就農のきっかけや目標を伺いました。
天歩塾責任者・村上尚樹さん
△事務所前にある自慢の看板と村上さん
―御社について教えてください。
当社は、有機農業を主体に地域づくり等を行う農事組合法人無茶々園から派生した会社です。地域の農業はこれまで親子代々で継承する形が一般的でしたが、町に住む非農家の新規就農希望者が農家と同じ経営をしていくには知識も経験も信用もなく技術的にも難しい面がありました。それなら新規就農者達が集まって『農家の農業』とは違った新しい農業を目指して1999年に立ち上がりました。現在の事業内容は、有機栽培による柑橘や野菜の生産、また、自社の生産物を利用した農産加工品の製造を行っています。加えて、農繁期には無茶々園の農家への作業派遣なども行っています。
―村上さんも非農家ですか?
そうです。僕の場合は「有機農業だから」ではなく、この地域の暮らしぶり、生き方に魅力を感じ、約10年前に就職しました。学生の頃、なんとなく飛びこんだ農業研修で「何を仕事にするか」ではなく「どんな風に生きていきたいのか」ということが大事だなと感じました。
―農場責任者として、若手社員には、どのようなことを期待されていますか?
目的意識を持ち自らが考え、工夫し、仕組みを作れるような、自立した農業者になってほしい。それは必ずしも「独立して一人でやっていく」という意味ではなく、自分の足で立ちながら農業経営をし、共通の大きな目標の下では、自立した者同士で協力しながらやっていける人、という意味です。そういう環境づくりをするのも僕の仕事の一つです。
入社6年目・吉山毅さん
―「農業を仕事にしよう!」と思ったきっかけを教えてください。
早稲田大学法学部を卒業し司法書士事務所に勤めていたのですが、仕事が自分に合わなかったことと、法改正の影響で安売り競争になっていくことに虚しさを感じ、転職を決めました。その時、以前より興味のあった農業に進むことにしました。
―農業に興味を持ったきっかけは?
ビジネスチャンスを感じたからです。やる人が少なくて畑が余っているということは、やり方次第で相当なビジネスになると思います。それに、自分の個性を出せる仕事をしたいと思っていたので、農業は合っていました。
―ここに来るまで、農業経験はありましたか?
全くなかったですね。東京出身の非農家ですし、全くの未経験でした。最初は「農業ってどんなものか体験してみよう」と思い、農業研修を斡旋する機関に相談し、ここの存在を知りました。そして、ネットで詳しく調べ、3週間の短期研修に来ました。研修が終わり一旦東京に帰ったのですが、「スタッフを募集している」と誘われ、転職しました。
―何がポイントでしたか?
一つは有機農業をしている点です。農業で生き残るには付加価値をつけて高く売る方法が必要だと考えているので、転職を考えているときから「有機農業をしたい」と考えていました。また、ここは柑橘も野菜もやっているので、両方学べる点もポイントでした。
―今後の目標を教えてください。
私は今年12月に退職し、来年から独立する予定なので、まずは軌道にのせたいなと思っています。有機農業で品質の良いものを作りたいというのは大前提ですが、収入にもこだわりたい。今はSNSも発達しているので「これだけ儲かって、こんなに良い暮らしができる」という発信をしていけば、自然と若い人は集まるんじゃないかと思っています。
―最後に、学生に一言お願いします!
体験してみることが大事です。農業は実際にやってみないと分からないことが沢山あるので、色んなところに研修へ行って、自分の肌感覚で農業を感じてほしいですね。それと、「やり方次第でこんなに儲かるんだ」という点にも魅力を感じてほしいと思います。
入社半年・山本翔平さん
―ここは何で見つけましたか?
ホームページです。写真を見て「良さそうだな」と思い、最初は1週間ほど研修をさせてもらいその後1ヶ月くらい研修し、ここでやってみたいと就職を決めました。農業は少なくとも2~3年やらないと分からないと思うので、今は勉強の日々です。
― 山本さんは農学部だったのですか?
いえ、工学部でした。実は、大学は中退しまして・・・今もまだ具体的な将来ビジョンが定まっていません。自分が本当にやりたいことは何なのかまだはっきりとはみえませんが、それが見つかるまで、そこまでの過程も大事にしたいと思っています。
―学生に一言お願いします。
大学時代は、いろんな経験を積んでほしいですね。実際に見て聞いて体験して、僕はそういうことが出来る期間を自ら捨ててしまったので今考えると「もったいなかったな」と思うと時もあります。だからこそ、現役生には色んなことに挑戦してほしいと思います。そして、「これだ」と思えるものに早く出会えたらいいですね。
入社1年目・旅田昌典さん
―「就農しよう」と思ったきっかけは?
大学3年生の頃、就活を考え始めた時です。最初はエネルギー関係の仕事を考えていたのですが、経済学部で専門知識がなかったこともあり、エネルギー関係も含め包括的に取り組めるであろう農業に興味を持ちました。加えて、農業が抱える「若者が少ない」といった社会的な課題を解決したいという想いと、野菜が好きという理由もあります。
―ここに決めた理由は何ですか?
将来は地元・和歌山県で新規就農し、仲間を募ってエコビレッジをしていきたいと思っています。愛媛県は和歌山県と気候が似ていますし、無茶々園は自分の将来ビジョンとも合うので勉強できると思いました。それに農業法人は、社員として給料をもらいながら農業を学ぶことができるので、それも魅力の一つでした。
―学生にメッセージをお願いします!
いろんな農家に行って自分のやりたい農業を見つけてほしいですね。僕は最初に行った有機農家さんが良くて「これだ!」と思いましたが、本当に有機農業が良いのか検証したいと思い、慣行農業や自然栽培、大規模農業法人等で研修を積みました。同じ「農家」「農業」と言っても、経営者の考え方や手順など、細かい点は様々です。色んな農家へ行って話を聞いて影響を受けることで、自分のビジョンも固まると思いますよ。
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