アスパラマル(株) 代表取締役 吉見雅史


(※当社発行の農業フリーペーパー「VOICE」31号/2015年夏号より転載)

プロフィール

氏名 吉見 雅史(39)
出身 長野県小県郡長和町
略歴 専門学校卒業後、福祉関係の事務職として10年間働いたのち、家業へ就農。地域に根ざした「老舗」の農業を目指し、規模拡大や雇用創出など新しい事へも挑戦している。

時代に合った農業で「地域の老舗」を目指す!

―就農のきっかけを教えてください。
 20代の頃から「30歳になったら自分の仕事がしたい」と思っていて、31歳の時に10年間勤めた会社をやめて就農しました。就農前から「家業を継ぐだけでなく、自分で新しいことをしたい」と思っていたので、それまで取組んでいなかったアスパラを始めました。

―新しい作物を始めるには覚悟も必要ではありませんでしたか?
 その時代に合わせて次の世代が新しいことにチャレンジすることは、すごく大事だと思うんですよね。
 僕の場合、就農当時はお米と「新テッポウユリ」という花を作っていましたが、周辺の農家さんが高齢化等で辞め始め、その方々の水田を借りて稲作の規模が大きくなり始めていたので稲作メインでの農業を考えていましたが、お米の単価が下がり始めていたこともあり「これじゃまずいな」と考え、県の奨励品種でもあるアスパラに取組み始めました。
 今はアスパラとお米を中心にした農業をしていますが、アスパラは、花の生産技術を活かせたり、田植え時期以外は稲作の農繁期と重ならず周年で仕事ができたり、「水田地域での野菜栽培」ということで注目されたり、様々な効果があることに気付きました。
 それに、単体で味の濃いアスパラは「野菜本来の味を食べたい」という今の時代にすごく合っているんですよね。「求められる作物」は「売れる作物」でもあります。販路は、飲食店、地元スーパー約30店舗、農協、等と幅広いのですが、「農場を見たい」と見学にいらっしゃるシェフも多いですよ。

―シェフとはどのようなお話をされますか?
 最初は話を聞きますね。どういったものが欲しいのかは聞かないとわからないですから。例えば、料理の仕方を聞いて、「こういう料理ならこのサイズで、太さはこれ位がいい」とか「キロ単位でなく本数単位にしましょう」とか、その方に合った提案ができます。コミュニケーションはよく取るようにしていますし、出来る限りお取引様へ行くようにもしています。

―外へ出られる事も多いのですね。
 就農して最初の3年間は生産等の技術を覚えるのが精一杯でしたが、「それもまずいな」と思って出るようになりました。地域の4Hクラブに所属していたので、そこから色んな人に繋がったり、自分が興味を持った人たちに電話をして会いに行ったりしています。
 会社員時代は会社の意向を汲んだ意見しか言えませんでしたが、経営者である今は自分の言葉として話ができるので、その点が大きく違いますね。自分が責任を負う立場なので、言ったことの重さと責任感は格段に違いますが、ストレスはないですよ(笑)。

―責任感のあるお仕事ですね!今後はどのような目標をお持ちでしょうか?
 「ここに帰ってきたら必ずこれを食べる!」というような、ここ長和地域の「老舗」として、長く農業を続けていきたいですね。
 実は今年1月に法人化したのですが、法人登記をした時に「次の世代に繋げていかないと」と思ったんですよ。僕は10年サイクルで1つのことが育つと思っているので、10年後は中心となる人が変わっていると思います。それに、もしその人が「他の作物に取組みたい」と言ったら、それはそれで良いとも思っています。時代に合った農業をしながら、会社が長く続くことで地域に安心感が生まれる、そういう機能になりたいと思っています。

―最後に、学生へ一言お願いします!
 学生中は色んなところへ行って経験を積んでほしいですね。ただ就職したら、たとえ「?」マークが付いても少しは我慢して働いてほしいです。少なくとも3年くらい働かないと、仕事の本質は分からないと思いますよ。


ちょっと気になる一問一答

Q 好きな言葉は?
A 「字と恥はかけ」。会社員時代に言われた言葉で、「そうしてお前達は成長するんだ」と言われ実践してきました(笑)。20代は恥をかいても「しょうがないな」で済みますが、30歳過ぎると恥をかかないように努力することが大切ですね。

Q 趣味は?
A スーツを着て営業に行くこと(笑)

Q 好きな農作業の瞬間は?
A その年の一番最初のアスパラを収穫したとき。

Q 好きな農機具は?
A 手、ですね。例えば、機械を操作するにしても手が必要。頭も感性も必要ですが、オペレーターの操作が悪ければ上手く動かせないですからね。

Q 好きな女性のタイプは?
この年になるとストライクゾーンが広くなるんですよね(笑)。20代の頃は理想を追い求めるけど、年齢を重ねて人間の本質や他人の特性に気付くようになると、理想は追わなくなるんじゃないかな。あえて言うなら、わがままな自分を怒らない人ですね(笑)。

Q アスパラの魅力を一言で!
A 旨い!


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