~農業界×大学生の就活情報サイト~

農業界地図ロゴ

農業法人・農業者インタビュー >ナカスジファーム

ナカスジファーム 代表 中筋秀樹さん

「最も重要なのは“人”」
そう話すナカスジファーム 代表 中筋秀樹さん(42)(下写真)は、大規模な都市近郊農業を展開しながら次世代農業者の育成にも尽力されています。今回は、農業への想いや人材育成についてお話を伺いました。
(取材:2018年5月2日)

「次世代農業者を育て、地域農業を盛り上げる!」

―まず、中筋さんが就農された経緯と農園の概要について教えてください。
 ここ富田林市は大阪府のなかでもナスとキュウリの大産地です。私はこの地で農家の息子として生まれました。高校は農芸高校へ、大学は農業大学校へ行き、卒業後そのまま就農したので、就農したのは20歳の頃です。その頃にはすでに父親が大規模経営をしていました。正確にいえば、父親たちの代がこの地域をナスとキュウリの一大産地にしていきました。
 就農に関しては、親に「やれ」と言われたことはなく、気づいたら足をつっこんでいた感じです(笑)。「農家に生まれたからしょうがない」という気持ちはありましたが、そう思いながら仕事をするのも嫌なので「なんとかしてやろう!」って前向きに考えています。それに、、、父親が自分自身の目指すような背中をしていたんでしょうね。
 経営移譲をしたのは34~35歳の頃です。うちは家族経営体ではありますが、この規模の農園の一番上に立つというのはすごく重圧でしたし、最初の3年間はもがき苦しみましたよ。

ナカスジファームおよび中筋さん就農ヒストリー
(1902年頃) (設立)
1996年 大阪府立農林技術センター農業大学校卒業後すぐに就農 <中筋さん20歳の頃/4代目>
2002年 名称を「ナカスジファーム」に決定
2010年頃 経営移譲し代表に就任 <中筋さん34~35歳の頃>
2013年 経営理念の策定
2017年 農業体験型レクレーション施設「ハートオブナカスジファーム(Heart of Nakasuji farm)」設立、運営開始
2018年 JGAP取得および法人化に向けて準備中

ナカスジファーム概要
所在地 大阪府富田林市西板持町
経営規模 ハウス施設300a、露地70a
栽培品目 ナス230a(半促成栽培)、キュウリ230a(抑制栽培)、その他野菜(葉物類、根菜類、露地野菜、など)
従業員数 約35名(外国人研修生含む)/うち正規従業員25名

―どのような点でもがき苦しんだのですか?
 父親が経営者の頃は私が右腕として父親を支えていたのですが、経営移譲したあとは私がしてきた役割を担う右腕がいない(支えてくれる人がいない)という点に苦しみました。
 それに、経営移譲をしてすぐの時は、父親が「ああでもない、こうでもない」って口を挟んできました。自分自身、経営者として頼りなかった部分もあったので言われても当然だと思いますが、それを見ている従業員たちは「どっちの言うことを聞けばいいのか分からない」ってなりますよね。従業員の前で大喧嘩することもありました。そうした状況を一緒に乗り越えられた従業員もいれば、離れてしまった従業員もたくさんいます。離れてしまった従業員に未練はないのですが、「もしその時にちゃんとした体制ができていれば、一人も失わずに乗り越えられたのかもしれない」と思うことはあります。
 この規模になると「人」が「資本」になってきます。ナスもキュウリも機械化できない作業がたくさんあるので結局は人海戦術なんですが、「人が定着しない農園で規模拡大をしても意味あるのかな」って思いますし、今後のことを考えると経営の中身を立て直す必要があると思ったので、経営移譲してからは徹底的に体制を変えています。


△下葉かきや芽かきといった管理作業は基本的に手作業。写真は白ナス。

―具体的にどのような事をされていますか?
 大きくは、経営管理の見直しと人材育成です。
 まず経営管理に関しては、以前はかなり「どんぶり勘定」だったので、経営移譲後は原価計算ができるよう、生産管理、販売管理、人の時間の管理などのデータ化に取組みました。その甲斐もあり、ある程度は原価が出るようになりました。
 こうした体制を整えていくなかでGAP(Good Agricultural Practice/農業生産工程管理)の取得を目指すようになりました。取得を目指しているのはGAPの中でもJGAPですが、これまでの取組みがJGAPに準している部分もありますし、逆に取組めていない部分はJGAPに準して整備していこうと考えています。整備することで経営面のムダも軽減されると思いますし、従業員へ就業マニュアルも提示できると思います。

*経営理念も中筋さんが策定(下記)

経営理念
理念 【農】を志す我々が農業としてあるべき姿を創造する!!
使命 【食】を担うリーダーの育成により農業を発展させる
社是 国際社会に重要であり必要とされる農業経営をします
社訓 1.生産 安心安全はもちろん品質、生産技術の向上とコスト削減、安定供給に努め販売に求められる生産能力を持とう
2.販売 本来あるべき生産物の価値とそれに見合う適正価格を考え消費者のニーズに合う販売戦略で成果をあげよう
3.環境 農業が取り巻く地域の保全と人の食育、雇用で社会貢献しよう
4.人 社内、地域、関連企業、消費者をそれぞれに信頼しあい共存できる人間関係を築き上げよう
5.自然 自然の恵みに感謝し、自然の試練を真摯受け入れ人が自然と共存していく価値を育み乗り越えていこう

 人材育成に関しては、父親と私では経営方針が大きく違うのですが、「カリスマ経営者主導型」だった父親に対し、私は従業員主導型の「サーバントリーダーシップ」で進めています。もちろん方向性は経営者が示しますが、進めていくこと・考えていくことを従業員主導にしようと意識し始めたことで、人材育成に対しても大きく意識が変わりました。
 例えば、一つはGAP取得とも絡むのですが、生産工程を作成するためにプロジェクトチームを立ち上げました。具体的には、生産部、販売部、総務部、管理事務部などに部門を分けてそれぞれの部署の立ち位置から提案してもらうという風にスタッフを巻き込むようにしています。そうすることで、分かっているつもりで分かっていない部分を「見える化」でき、改善点も明確になってくると思います。
 また、「任せられる点は従業員に任せよう」という考えに変えたことで、従業員のなかから責任者(指導者)を作ることができました。「従業員の働く環境も良くしていかないと」と考えるようにもなり、週休が取れるようにしたり、残業も2時間程度で収まるようにしています。農繁期だと上手くいかないときもあるのですが、それでも概ねその体制にしています。同時に、社員評価制度も作成できるよう進めています。
 「人が資本」「人が宝」ということはこれからも言い続けていきますし、うちが飛躍的に良くなるのは人次第なので、働く人の環境整備はこれからも続けていきたいと思っています。併せて、地域を担う新規就農者の育成も進めていきたいと思い、様々な形で新規就農者育成もしています。


△年間13種類のナスを生産(写真は8種類)。パッケージには全てブランドマークがついている。

―新規就農者育成もされているのですね!具体的な取組みを教えていただけますか?
 従業員のうちこれまで数名、新規就農した子がいます。地方で就農した子がほとんどですが、なかには当園からのれん分けして新規就農した女性もいます。その子は近くで就農したこともあり、就農後も様々なサポートしています。
 例えば、農業をするためには農地が必要ですが、当園がお借りしている農地の一部をその子に分けようと思い、地主さんのところへ行って「何かあったらこちらで対応するので」とお願いして名義変更をしてもらいました。流通・販売に関しては、その子はネギを作っているのですが、まずは生産に特化することが大事なので、当園の流通に一緒にのせて販売しています。ほかにも、トラクターや薬散の機械などは時間単位でレンタルしたり、出荷調整のための作業場は当園の作業場の一部を貸しています。

―なぜそこまで力を入れているのですか?
 担い手をちゃんと育ててあげないと農業が先細りになっていくと思うからです。新規就農するにあたり「誰がサポートするのが一番いいのか?」と考えた時、技術指導ができたり、地域との兼ね合いが分かっていたり、何より苦労が一番わかる農業者が一番良いと思います。
 それに、私は大阪府等が主催する新規就農者育成事業の講師もしていますが、非農家の子の「農業やりたい!」っていう想いは、こちら(農家出身者)がビックリするほど熱いんですよね。すごく目がキラキラしていて、指導していても聞き方が全然違うんです。
 農業はあらゆる業種が集まった「総合職」みたいなものです。どれもプロ級でなくても出来るのですが、どれもそれなりに出来ないと厳しいと思うんです。最初から全部できなくても時間をかければ少しずつできると思うので、時間をかけてサポートしていくことも大事だと思います。そうした仲間を増やすことで身近に支え合える仲間もできますし、就農者が増えることで地域農業を守っていくことにも繋がっていくと思います。

―人材育成が地域農業の活性化にも繋がっていくのですね!最後に、今後の目標を教えてください。
 当園の理念は「【農】を志す我々が農業としてあるべき姿を創造する!!」
 この理念は一見するとわかりづらいのですが、これに則って動き出すと、永遠とやるべきことが続いていくんですよね。課題を1つクリアしたらまた次の課題も見えてくるので、それを乗り越えるために新たな努力をする。自分自身、いかに経営を効率よく回すかを考えたり、そのために必要なことを勉強したり行動するなど、ここ何年かの農業が今までやってきた中で一番楽しいですね。そのなかでも迷いが出てきたときは、理念を見直すと元に戻ることも出来ます。
 当園も地域農業も解決すべき課題はまだまだあるので、これからも必要だと思うことには、あらゆる面でチャレンジしていきたいと思います!


△新しい取組みの一つである、農業体験型レクレーション施設「Heart of Nakasujifarm」。
  バーベキューを楽しみながら、併設されたハウスでナスなどの野菜を好きなだけ収穫して食べることができる。


リンク

 ナカスジファーム 公式サイト
⇒ http://www14.plala.or.jp/nakasuji_farm/



※記載情報は取材当時のものです。
※無断転用・転載・改変を禁止します。引用の際は、当社までご連絡ください。

インタビュー一覧へ戻る

↑ PAGE TOP