「確実に足場を固めて新規就農を」
イチゴ農家 松本純佳さん

新規就農者の育成に積極的に取り組んでいる農業法人・あずま産直ねっとを含むいくつかの農業法人等での研修を経て独立就農を果たした松本純佳さん(33)に、就農までの経緯や現在の様子、今後の目標などについて伺いました!
(※当社発行の農業フリーペーパー「VOICE」37号/2016年冬号より転載)

確実に足場を固めて新規就農を

―就農を目指したきっかけを教えてください。
 大学生の頃から「60歳くらいになったら農業しよう」と思っていました。大学卒業後は奨学金の返済もあったので一般企業に就職したのですが、そこは「成果が出なければどんどん切る」という会社で、いわゆるブラック企業ですね、その方針になじめず半年で辞めました。辞める直前に改めて将来を考え直した時に、「60歳と言わず前倒しして農業を始めてみよう」と思いました。
 ただ前職のこともあり、「次の仕事選びは慎重にしたい。本当に自分が農業でやっていけるのか確かめよう」と思い、半年間ほど栃木のイチゴ農家さんでバイトをしました。そこで「これは 面白い。やりがいもある」と思い、本格的に就農を目指しました。とはいえ、奨学金の返済もあるので改めて農業を学ぶ学校へ行くわけにもいかなかったので、「お金をもらいながら勉強しよう」と思い、農業法人への就職を決めました。

―そこで、「あずま産直ねっと」さんに就職されたのですか?
 そうです。たしか「新・農業人フェア」という農業法人の合同就職説明会に参加して、気になった農業法人を3カ所ほどピックアップして、後日実際に訪問して、その上で決めました。

―決め手は何だったのですか?
 私はイチゴでの新規就農を目指していたのですが、ちょうど「あずま産直ねっと」がイチゴを始めるところで、「就職すればイチゴ担当になれる」という点に魅力を感じました。ただ、当たり前ですが、生産技術のない当時の私が担当になることは相当無理がありましたし、会社は多品目生産なのでイチゴ生産以外にも様々な仕事がありました。いろいろ考えた結果、「やはりイチゴに専念したい」と思い、「あずま産直ねっと」で2年間お世話になったあと、茨城県のイチゴの農業法人で1年間、地元のイチゴ農家さんで1年間研修し、その後、独立就農しました。今で就農5年目です。

―独立就農の際、何が大変でしたか?
 農地を借りることですね。研修先の農家さんや農協、農業指導センターなど多くの方のご協力をいただきながら探したのですが、6か月以上はかかりました。例えば、「貸していいよ」と仰っていただいた方のご家族から「あなたには貸せない」と言われたこともありますし、他にも様々な理由をつけて断られました。
 そして今の場所は、有難いことに、使われなくなっていた暖房機、水のあるハウスを農協の交渉で一式借りることができました。

―他の資材はどのように調達されたのですか?
 例えばトラクターは、「あずま産直ねっと」のご縁で格安で譲り受けました。また、新規就農者向けの無利子の融資を受けて運転資金にしました。
 これから新規で農業を始めたい方がいれば、新規で何から何まで揃えたら本当に大変なので、離農される方から譲り受けるのが良いと思います。

―人との繋がりが大切ですね。実際に就農されて、どのような時にやりがいを感じますか?
 良いイチゴができた時に一番やりがいを感じますね。よく近隣のイチゴ農家さんからもアドバイスをいただきます。皆さん師匠ですよ。まだまだうまくいかないことも多いのですが、毎年改善を重ねて納得のいくイチゴを作りたいと思っています。

―今後の目標を教えてください。
 まずは自分の生活を安定させることです。将来的には農業法人にして、私のように「農業をやりたい」という人がいれば積極的に受け入れていきたいと思います。このまま農業者が減ると荒地が増えてしまいますから。

―最後に、新規就農を志す学生に一言お願いします!
 独立就農をするのなら、ステップを踏んで足場を固めてから独立してほしいですね。学校で学んだことと実際の農業経営は異なることが多いので、「学校で学んだから大丈夫」という風に安易に考えない方がいいと思います。少なくとも、農家や農業法人で1年以上働く方が良いと思います。そうすると、お金のかけ方や本当に自分がやりたいことも見えてくると思います。「新規就農者はだめだよね」と言われないためにも、確実にそのステップを踏んでほしいと思います。


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