「10年先を見据えて、人材を育成する!」
有限会社 穂海農耕

「企業である以上、時代に合わせて常に変化しながら活動する」。そう語るのは約150haもの稲作経営をする有限会社穂海農耕 代表取締役 丸田さん。今回は同社の人材育成や、稲作特有の課題と解決策への取組みについて、丸田社長と日比農場長にお話を伺いました。


△丸田社長(上段左端)、日比農場長(下段右端)と社員の皆さん。
(※当社発行の農業フリーペーパー「VOICE」46号/2019年春号より転載)

10年先を見据えて、人材を育成する!

―御社が人材育成に取り組まれた背景について教えてください。
 当社の設立は平成17年ですが、当初は人材育成の重要性を認識していませんでした。というのも、それまでは自分の判断で作業できる人材が常に入ってきてくれていたからです。そのため人材育成について特に考える必要もなく、作付け面積に応じてぴったりとはまる人数で経営をしてきました。しかし約5年前に一気に農地が40ha増えたことが人材育成に本格的に取り組むきっかけとなりました。
 面積が増えて一人一人に求められる仕事量が多くなると、作業に追われて経験の浅い従業員さんに気を配ることもできず、作業についていけない人は辞めしまい、残った人に作業が集中し更に仕事が大変になるという悪循環に陥ってしまったのです。そこで何とかしなければと思い、組織のあり方と人材育成について考え始めました。

―どのような人材育成に取り組まれているのですか?
 まずは採用の時点で、一般作業職か総合管理職のいずれかを選んでいただきます。一般作業職は、通年で週休2日、定時出勤・定時退社が定められていますが、作業計画の立案や専門性が高い作業は基本的に行いません。一方、総合管理職は、残業もあり、繁忙期には週休1日など変動休日となりますが、作業計画の立案や専門性が高い作業も行うため、一般作業職に比べると給料も高く設定されています。
 入社後は、まず最初の3日間でお米の生産工程や安全教育などを座学で教えます。その後は働きながら作業手順等を教えますが、何かあれば教育係がフォローできる体制にしています。加えて、地元の銀行で開催される新入社員研修を受けてビジネスマナーを身につけてもらったり、県で開催される新規就農者研修で農機具の扱い方を学んだり、地元の農協が開催する研修を受けてもらうなど、みっちり新入社員教育を行います。
 その後のキャリアパスとしては、リーダー、主任、係長、課長、部長といった役職があり、役職に応じて、自社での研修に加えて行政や金融機関等で開催されるリーダー研修や管理職研修にも参加します。
 なお、社員には社会保険を整備していますし、昇給、賞与の制度も設けています。有給休暇も一般企業と遜色ない程度に設定しています。

―まさしく農業をするサラリーマンという感じですね!ところで、現場では個人の能力が重要になると思うのですが、稲作ならではの取組みなどありますか?
 まず、稲作など土地利用型農業の場合は、農地が広範囲に広がる場合もあり、例えば半径5㎞や10㎞の範囲で各々がその圃場に応じた作業をすることも多々あるので、自分で考えて行動する自主性が求められます。
 特に稲作の場合、夏場の水管理も重要な作業です。水管理は水口と水尻の板を上げたり下げたりして田んぼの水量を調整しますが、さじ加減がけっこう難しいんです。また、その際に、稲の状態や田んぼに不具合がないか等も確認します。担当者は始業時間前に担当圃場の水管理を済ませてくることになっていますが、その分は基本給と別の「水周り手当」が支給されます。
 逆に冬場は「自己研鑽(けんさん)休職制度」を設けています。この制度を申請すれば冬期間に2カ月や3カ月といった長期間の休職を取得できるので、例えばその間、スノーボードのインストラクターをする社員もいます。休職中は給与は支給されませんが社会保険等はかけられたままになります。なお、副業は一年を通して問題ありません。

―様々な制度があるのですね!今後はどのような展望を考えていますか?
 当社のある板倉区は約1,000haの作付け面積がありますが、その多くを平均年齢がおよそ70歳の方々が担っています。そこで一番危惧しているのが10年後の状況です。当社の予測では、10年以内にリタイアする人が続々と出てきて、いずれ200ha程の農地を託されるのではないかと考えています。ただ、そのタイミングがいつ来るかは分かりません。だからこそ、今のうちから人材育成に取り組む必要があるとも考えています。
 当社に限らず全国的にこうした状況が危惧されていますが、むしろそこにビジネスチャンスがあるとも思いますし、今からそれに備えていくことでピンチをチャンスに変えることができるとも思います。売り先が国内だけでなく世界にもあることを考えれば、農業はやり方次第で増収・増益が確約されている産業とも言えます。私たちは常に時代の風を読み、時代に合わせながら、時に時代を先取りしながら、変化を恐れずに自己改革を進めていきたいと考えています。

―最後に、農業法人への就職を志す学生にアドバイスをお願いします!
 農業は、自然と向き合い、国の根幹ともなる食べ物を作ることができる、魅力的な産業です!そして、若い力が求められています。
 農業法人へ就職を希望される方は、希望する法人が社会保険を整備しているか、企業的な経営をしているか、等に注目すると良いかと思います。また農業に限らないことですが、就職先でやりがいを得るためにはそれなりの一生懸命さが求められます。また、仕事には良い部分もあれば辛い部分もあるというように、物事の多面性を理解することも大事なことだと思います。

社員募集中!

社員募集中!(有)穂海農耕および(株)穂海の公式サイトより。
 株式会社 穂海 https://www.houmi.jp


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