【観光農園】 トマトの複合施設/福島県いわき市

「体験を通して農業のイメージを変えたい」。
そう話すのは、トマトの収穫から食までを提供している株式会社ワンダーファーム 営業部 営業推進Gの草野さん。

同社は、2013年4月に有限会社とまとランドいわきを母体として設立された会社で、農産物加工販売事業(トマトジュース・ドレッシング等)、物販事業(直売所の運営)、飲食事業(レストラン運営)、体験事業、の大きく4つの事業を展開しています。今回は、その中でも「体験」を重視している理由について、お話を伺いました!

(※当社発行の農業フリーペーパー「VOICE」45号/2018年冬号より転載)

現場で体験して、農業を知ってもらう!

―貴社で提供されている「トマト狩り」は珍しい収穫体験だと思いました。しかもハウスはオランダ型だと伺いました。
 そうですね、当社では太陽光利用型植物工場といったオランダ型のハウス(※1)でトマト栽培をしています。ここ福島県いわき市は太平洋側に位置しており、冬も雪がほぼ降らず寒暖差も少ないので、トマト生産に向いています。当社はトマトの良さを色んな形で知ってもらいたいという想いから、収穫体験・直売所・レストラン・加工場の4つの事業に取組んでおり、特に体験には力を入れてます。


―なぜ収穫体験を始めたのですか?
 きっかけは2011年に起きた東日本大震災と原発事故です。原発事故後は風評被害もあり「放射線検査で安全が確認されています」とPRしても福島県産農産物は厳しい状況が続きました。そのマイナスイメージを変えるために、実際に現場にきてもらって、農家さんなど生産現場で働いている方の声を聴いてもらいたいと思い、最初は「見学」から始め、その後「体験」に変わりました。
 また、震災後は地域の子どもたちがなかなか外で遊べない状況が続いたので、子ども達が遊べる場所を提供したいという想いもありました。

―震災がきっかけで貴社を設立されたのですか?
 いや、構想はそれよりも前からありました。当社は親会社(トマト生産を中心にした農業法人)の構想から生まれた複合施設です。震災の影響で設立が遅れてしまいましたが、震災後は地元の料理人さんや美容師さんなど異業種の方と仕事をする機会も増え、今まで発想しなかったアイディアもたくさんいただけたので追い風にもなりましたね。

―地元の方との繋がりを大切にされていますね!もともと対象にされていたのも地元の方だったのですか?
 そうです。地元に愛される会社づくりが一番大事だと思いますから。

―お客様も地元の方が多いのですか?
 地元を含めた県内の方はもちろん、宮城県や茨城県など県外のお客様も多いですよ。平日は団体の方が多く、週末はお子様連れのご家族が多いですね。トマト狩りのお客様だけで年間2000人以上は来られていると思います。

―すごい人数ですね!この2つのハウス(栽培面積4.1 ha)でカバーできますか?
 はい、できます。もちろん、環境制御がしやすいハウスと言えどもやはり作物なので収量は変動しますが、1年間を通してトマトの収穫ができるように植える時期をずらすなど工夫しています。
 また、こうした施設では、防除の観点から外部の方を施設内に入れることに前向きでない場合が多いと思いますが、私たちは実際に現場を見て触れる体験を通して農業に関心を持ってもらいたいので積極的に行っています。

―現場を知ることは大切ですよね!体験事業を通してわかったことはありますか?
 沢山ありますね!一番は、生産者とお客様の見ている点や考え方の違いです。例えば、私たちが普段の作業で気にならないところに疑問を持ったり、トマトの枝の形など細かいところまで見ていたり。なかには「この施設はいくらするの?」などドキッとする質問をされることもあります。しかも子どもから(笑)。今の小学生って結構いろんなこと聞くんだなって感心します。
 お客様から気付かされることも多いのですが、やっぱり一番嬉しいのは、「体験を通してトマトを食べられるようになった」とか、「トマトがなっている様子を見られたことが子どもにとってすごく良かった」といった声を聞けた時ですね。
 個人的な気持ちもあるのですが、体験を通して農業のイメージが「カッコいい」「楽しい」「儲かる」などプラスに変わっていけばいいなと思っています。実は私は家業で畜産をしているのですが、一番こだわっているのは服装です。ちょっとオシャレなつなぎを着たり、テンガロンハットを被ったり。この職場で被ることもありますよ。多くの方が持たれている農業のダメなイメージを、見た目や体験を通してどんどん変えていきたいですね。 

―いろいろな視点からイメージを変えていくことが出来そうですね!最後に、今後の展望を教えてください。
 まずは現場にお越しいただき、体験を通して農業の良さや楽しさに気付いてもらえたらいいなと思います。当社の場合、トマト狩りや職場体験など目的を持って来られる方と、団体を含め旅行帰りに立ち寄る方の大きく2パターンに分かれますが、後者の場合でもやはり体験は外したくないので、旅行会社と連携して様々な企画を立てていきたいと考えています。
 さらに関心を持たれた方は、当施設で農業研修をすることも可能です。トマト生産はもちろん、農業に関わること全てを教えます。若手の育成はすごく大事だと思っていますし、実際に体験を通して「就職したい!」と連絡をくれた学生さんもいて嬉しくなりました。
 これからも農業を盛り上げるため、名前の通りワンダーな体験をどんどん提供していきたいと思います!

(※1)オランダ型ハウスとは?

 オランダ型ハウスは、更なる増収と省エネが期待されている特徴がある。
 同社ではFクリーンといった特徴なフィルムを使い、太陽光を拡散させている。また、温度管理やCO2濃度の管理などはすべてコンピューターで行われている。培地にはココウールを使い、点滴養液栽培を取り入れている。大玉トマト、中玉トマト、ミニトマトを生産しており、富丸ムーチョ、カンパリ、アイコ、フラガール、イエローキャロルなど、栽培品種は 合わせて11種類にのぼる。


公式サイト

 株式会社ワンダーファーム http://www.wonder-farm.co.jp/


※記載情報は取材当時のものです。
※無断転用・転載・改変を禁止します。引用の際は、当社までご連絡ください。