東京で消費者に近い農業を!
繁昌農園 代表 繁昌知洋


(※当社発行の農業フリーペーパー「VOICE」44号/2018年秋号より転載)

プロフィール

氏名: 繁昌 知洋(28)
出身: 東京都小平市
略歴: 北里大学 海洋生命科学部を卒業後、社会人経験を経て東京都青梅市で就農。現在3年目。環境に優しい有機農業で少量多品目の野菜を生産・販売している。マルシェでの販売や収穫体験など、消費者と生産者を繋ぐ活動にも力を入れている。

東京で消費者に近い農業を!

―就農されたきっかえを教えてください。
 幼い頃から生き物が好きだったので、将来は生物系か環境系の仕事に就きたいと思っていましたが、後継者が不足しているという日本の農業の現状を知り「日本の農業を活性化させたい」という想いから就農しました。

―大学卒業後すぐに就農されたのですか?
 いえ、卒業後は野菜の販売方法や流通、産地等について勉強したいと考え八百屋に就職しました。当初は2~3年働く予定だったのですが、「早く農業がしたい」という気持ちが強くなり1年程で退職しました。その後は飲食店でアルバイトをしながら民間企業の体験農園で1年間農業を学びました。実はそれまで農作業の経験がほぼなく、土を耕したのもその時が初めてだったんです!自分で畑を耕すまでは「本当に自分に農業ができるのか」という不安が大きかったのですが、初めて自分の畑で野菜が収穫できた時に「自分にも農業ができる」と思い、就農への思いがより一層強まりました。その後、都内の農家さんの元で2年間研修をさせていただいたあと、東京都青梅市で就農しました。

―なぜ東京で就農しようと思ったのですか?
 大きくは2つあります。1つ目は、実家が東京にあり、将来親の介護をすることになった場合に近い方が良いと思ったからです。2つ目は、東京は野菜の大消費地であり、販路も多いためです。僕はお客さんとのコミュニケーションを大切にしたいと思っているので、スーパーや八百屋のほか、個人のお客さんへの直販やマルシェでの対面販売もしていますよ!

―ご自身の思い描く農業をされているのですね!ところで繁昌さんは非農家から新規就農されましたが、ご苦労もありましたか?
 そうですね、貯金が少なかったので就農1年目は苦労しましたが、意外と費用をかけずに就農できました。具体的には、就農までに貯めた240万円のうち、180万円で耕運機やトラクター、軽トラックなどを全て中古で買いました。農地は3年かけて増やし、現在は合計1.2 haになりました。「就農には1千万円以上必要だ」と言う人もいますが、都内だと農地が狭く大型機械もいらないので、「コンパクトに生産して付加価値をつけて売る」という農業をしたい方には合っていると思います。付加価値をつけるために他の人が作らないような在来種の野菜の栽培にも取り組んでいます。マルシェに珍しい野菜が並んでいると、お客さんも喜んで買ってくれますよ。
 一方で、農地が増えたことで人手不足にも悩んでいます。私の畑は全て有機栽培なので、雑草を防ぐためにマルチを敷いたり、害虫を防ぐために防虫ネットを張ったり、作業がとても多いんです。収穫作業も全て手作業で行っているので正直一人では回っていない時もありますね…。「農業をやってみたい!」という方がいれば、研修生として受け入れて一緒に働けたらいいなと思っています。

―今後取り組みたいことを教えてください。
 私は人との繋がりを大切にした農業をしていきたいと思っており、将来的には、自分の直売所を持ったり、食育体験などのイベントもしたいと考えています。特に都会の子供達には、食育体験を通して、採れたての野菜を食べてもらい、生き物の大切さや生態系を守る重要さを学んでほしいなと思っています。

―最後に、学生に一言お願いします!
 やりたいことは迷わずにやる。不安があっても前向きに進んでいくと世界は開けていくと思います。また、非農家からの新規就農を考えている方のなかには資金面で悩んでいる人もいるかもしれませんが、首都圏は農地が広くないので、やり方によっては初期投資も少なくても始められると思います。東京は意外と農業が始めやすい場所だと思いますよ!

一問一答

Q.趣味は?
A.釣り、登山、ドライブ、海外旅行、シュノーケリング、生き物を飼うこと、多肉植物を育てることなど、たくさんあります!

Q.好きな言葉は?
A.「雑草魂」。雑草は刈っても刈っても生えてくるので、自分も雑草のようにくじけない人になりたいと思います。それに、雑草は面白いことに種から育てようとしても育たないんですよ。畑の環境に上手い具合に適応して生きているので、すごくたくましいなと思います。

Q.好きな農機具は?
A.マルチャー耕運機です。地温を上げたり、雑草を防止したりするためのマルチを張るための機械で、手作業の5倍以上のスピードでできます。

Q.好きな農作業の瞬間は?
A.収穫です。特にサツマイモの収穫が好きです。理由は、栽培期間が長いので、収穫した時の達成感が大きいのと、土から堀るまで、どんな形や大きさのものが出てくるのが分からないのでワクワクしますね。大きいものが採れると感動します!

Q.好きな異性のタイプは?
A.普段はゆったりしているけど仕事はしっかりやる人。加えて、好奇心が強く、色んな所に一緒に行って楽しんでくれる人がいいですね。去年結婚しましたが、奥さんがまさにそのタイプです(笑)


※記載情報は取材当時のものです。
※無断転用・転載・改変を禁止します。引用の際は、当社までご連絡ください。