北海道 農業研修ツアー

 2017年9月4日(月)~7日(木)の4日間、北海道農業研修ツアーを実施しました。
 この企画は、有限会社 社名渕みどり牧場 石丸さんの、「都会の大学生が北海道の農業についてどう思っているのか知りたい。まずは見てほしい」という一言から始まりました。
 今回参加したのは関東の大学生4名。期間中は農業実習や視察などを実施しました…が、学ぶだけではありません!ツアーの最後には「北海道(遠軽)で農業をする若者を増やすためにどうすればいいかを学生目線で提案する」という課題付き。さて、その成果とは?
(※当社発行の農業フリーペーパー「VOICE」40号/2017年秋号より転載)

スケジュール

1日目 夕方 石丸さんと顔合わせ、搾乳作業の見学
2日目 早朝 酪農実習 [社名渕みどり牧場]
午前~夕方 視察
①株式会社はまほろ
②有限会社ドリームヒル
③有限会社森谷ファーム
若手社員の方々と交流会
3日目 午前 視察
④ノースプレインファーム株式会社
午後~ 畑作実習(2か所) [高橋農園] [岡村農園]
4日目 午前 ※引き続き、畑作実習。視察 ⑤有限会社井上牧場(*学生除く)
午後 遠軽町役場にて意見交換会、発表

酪農実習 ~経営と命を学ぶ~

 ツアー最初の実習は社名渕みどり牧場さんでの酪農実習です。一般的に酪農の作業は、搾乳(多くの場合、早朝と夕方の2回)、牛の管理(病気のチェック、人工授精など)、エサやり、哺乳、掃除、牧草やデントコーン、サイレージ等の生産、機械整備、堆肥の処理、事務など多岐にわたりますが、今回私たちは朝4時半から始まる搾乳作業、掃除、エサやり、子牛の哺乳および体温測定を実習しました。
 初めて牛に触れる学生たち。石丸さんや社員さんにご指導いただきながら、慣れない手つきで作業を進めます。
 作業を通し印象的だったことは、この日で命を落とす牛の存在を知った学生の反応でした。その牛は病気のため立ち上がることができず治る見込みがないため、この日の午後に業者へ出すとのこと。石丸さんからは「投薬しているからお肉にはできなくて肉骨粉になるんだよ」と教えていただきました。家畜は愛玩動物ではなく経済動物。そのため経営判断が必要になるときがある。そう理解はしていても目の前に現実を突き付けられたことで、経営と命について改めて考えたようです。

視察 ~様々な経営者から学ぶ~

 「北海道には様々な農業がある。できるだけ多く知ってほしい」という石丸さんの意向のもと、はまほろさん(畑作・500ha以上)、ドリームヒルさん(酪農・経産牛 1700頭以上、育成牛540頭以上)、森谷ファームさん(畑作・35 ha)といった大規模経営体と、ノースプレインファームさん(酪農[有機JAS]・搾乳牛約60頭、育成牛約50頭)、井上牧場さん(酪農[ホルスタイン・ブラウンスイス・ガンジー]・合計約150頭)といった特徴的な酪農をされる経営体を視察しました。


 規模も手法も異なる経営者の方々にお話を伺いましたが、共通の課題は、人材の確保・育成と、地域を守ること。学生の中には、視察のあと石丸さんから聞いた「北海道も本州もどの地域でも、大規模化や加工品製造への挑戦の裏にあるのは、地元を守りたいという共通した想いだよ」という言葉がとても印象に残ったそうです。

社員の皆さんとの交流会

 社名渕みどり牧場に勤める20~30代の若手社員さんのご厚意で交流会を開いてくださいました。社員さんの大半は非農家・異業種・北海道以外から就職された方々です。酪農を目指したきっかけ、仕事としての酪農、将来の目標など、ざっくばらんにお話をしました。

畑作実習 ~大規模経営を体感~

 学生は2名ずつに分かれ、家族経営体の農家さん2軒(高橋農園さん・岡村農園さん)にお世話になりました。家族経営といえど、その規模は広大!
 例えば岡村農園さんでは、アスパラ・かぼちゃ・シソ・小麦・ビート等を生産されていますが、面積はのべ40 ha!お世話になった時はシソのはざかけシーズンで、約9haから採れるシソを手作業ではざかけにしました。乾燥したあとは回収し蒸留をしてシソ油を採るとのこと。「ニッチな産業だから機械化が進まなくて全て手作業になる」というお話は衝撃的でした…!

発表

 最後は、遠軽町役場の方も加え「北海道(遠軽)で農業をする若者を増やすためにどうすればいいか」を発表しました。学生たちの提案に真剣に耳を傾ける役場の方々。それというのも、現地ではこれから農家・役場・JAなどで構成される「担い手協議会」が立ち上がる予定で、その活動の参考にもしたいとのこと。そのため提案内容の記載は控えますが、 一つでも実現できるよう私たちもご協力できればと思います!

北海道農業研修ツアーを通して…

和田 達典 [東京農業大学1年]

 今回のツアーでは北海道特有の農業について、地域の方々やほかの参加者から、知識や経験、農業への考え方、農業を取りまく問題への意見を聞きたいと思っていました。そして4日間を通し、成功談や失敗談、農業への心意気、経営者のまだまだ続く目標、従業員として働いている方々の夢や野望など、さまざまな立場のさまざまな意見を伺い、考えさせられるものがありました。
 酪農・畑作実習も大変勉強になりました。自分が知らない特色のある経営や生産を行っている農業に出会える機会があればもっと積極的に参加したいと思いましたし、北海道農業への関心が高まりました。

井上 息吹 [東京農業大学2年]

 当初、北海道ならではの大規模農業での実習や、法人化、6次産業化で成功されている経営者の想いや道のりなどを伺いたいと思っていましたが、期待していた以上の体験やお話を伺うことができ、とても有意義なツアーとなりました。社名渕みどり牧場さんでは初めて酪農実習をしましたが動物と仕事をする難しさや楽しさを教えていただきました。なにより全てを通し大規模農業のインパクトは大きく、本州と北海道の農家さんの農業の価値観の違いも面白く、「本州ではできない農業が多い」と思ったことが素直な感想です。その中で共通の問題として人手不足があげられていたことが印象深かったです。

堀内 優花 [宇都宮大学3年]

 ツアーに参加し、農業に関心のある学生であれば一度は北海道の農業を見る機会を持つ方が良いと思いました。以前から北海道の農業は大規模経営のイメージがありましたが、①大規模化になるほど投資の範囲も広がり土地や資金のやり繰りが一層大変になるという経営側の苦労に気づけたり、②機械化が進む中でも手作業でしか成り立たない工程がまだまだ沢山あることを大規模経営が主流の北海道で実感できたことは大きな学びになりました。大規模経営の現状を知り、10年後の農業経営を考える際、簡単に「大規模経営で機械化」ということを口にしなくなるなぁと思いました。

柳田 晋作 [千葉大学4年]

 実家は熊本県の柑橘農家です。中山間地域のため効率化が難しい地元の農業と北海道の農業は別物だと思っていました。もちろん規模や考え方は違いましたが、後継者や繁忙期の人手の確保、地域の人口減少と生産量の低下など農業が抱える課題や、それに対する農業者の想いは全国共通だと感じました。私の将来の目標は「地元の農業を持続的に発展させること」です。人材の確保や資金調達など多くの課題がありますが、今回の研修から多くのヒントをいただきました。
 この出会いに感謝し、日本の農業を盛り上げていくために、これからももっと勉強していきたいという意欲が強くなりました。

リンク

 遠軽町 ⇒ http://engaru.jp/
 (有)社名渕みどり牧場 ⇒ http://www.dairy.co.jp/edf/list/hokkaido/midori.html
 (株)はまほろ ⇒ http://www.hamahoro.jp/
 (有)ドリームヒル ⇒ https://www.dreamhill.co.jp/
 (有)森谷ファーム ⇒ http://farm-moriya.com/
 ノースプレインファーム(株) ⇒ http://northplainfarm.co.jp/wp/
 (有)井上牧場 ⇒ https://www.inouemilkfarm.com/


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