信頼される茶師を目指す!
有限会社東阜 横田園 6代目 横田貴弘
(※当社発行の農業フリーペーパー「VOICE」35号/2016年夏号より転載)
プロフィール
氏名 横田 貴弘(26)
出身 埼玉県狭山市
略歴 明治大学 農学部 食料環境政策学科を卒業後、(独)野菜茶業研究所 金谷茶業研究拠点で2年間研修をした後、家業に就農。2.2haの茶畑で生産・加工・販売を行う。(有)東阜 横田園の6代目として日々邁進中!
信頼される茶師を目指す!
―就農のきっかけを教えてください。
大学時代に所属していた農業サークルを通して出会った人たちの影響が大きいですね。特に、自分の地域や農業に誇りを持ち「将来は地域に戻る」という先輩方に感化されました。加えて、小さい頃から地域の方々に可愛がっていただいたことや、お茶の手伝いをしたときに「美味しい」と言われたことも嬉しかった。就活では色々な職業も見ましたが、「自分には茶業が合っている」と思い、大学卒業後、お茶の専門学校で2年間学び、家業へ就農しました。
―どの点が合っていると思われましたか?
お茶は、茶葉を収穫後、蒸し・揉み・乾燥させ製造し、その後、篩(ふるい)にかけたり、再乾燥したりする仕上げ加工をします。製造の作業を担当している父がどれだけ良いものを作っても、最後の仕上げを担当している僕がポカをしたら商品の魅力を100%引き出せなくなってしまうので気が抜けませんが、自分の作り出したい味を考えて加工し、その通りに上手く作り出せて、出来たお茶を褒められると凄くやりがいになる。そういう点がすごく魅力的ですね!
―加工の違いでそこまで変わりますか?
変わりますよ!例えば、「おくはるか」という品種は桜葉のような香りがするお茶ですが、僕はその香りを活かせるように仕上げの再乾燥の温度を調整しています。加工は機械作業が多いのですが、茶葉の状態を見ながら機械を微調整していくのも重要な技術の一つです。その品種が好きなお客様から「横田園が一番香りを活かしているね」と感想をいただいたときは嬉しかったですね!しかし、同じ「おくはるか」でも、「晩生の品種だから作業時間を分散できる」という理由で栽培している方もいます。でも、どちらも間違いではないと思います。大切なのは、その品種をどう活かすかなんです。
―お茶も様々な品種があるんですね。
ありますよ。当園では8種類のお茶を栽培しています。品種に応じて栽培方法や加工方法を工夫していますが、お茶は元々が生き物なので毎年同じようにできるとも限らないですし、逆に「このお茶はもっと旨味を出そう」と栽培方法を変える場合もあります。まだまだ手探り状態ですが、お客様に喜ばれるお茶を作り出していきたいですね。
―すごくお客様を意識されていますね!
ここ、狭山茶の産地では、「自園・自製・自販」の農家が非常に多いんです。当園もそうですが、茶畑があって、自社工場があって、自社店舗で売る。お客様との対面販売が多いので、ダイレクトに声を聴くことができますし、その声を栽培や加工に活かすこともできます。それが、狭山茶の魅力の一つですね。
―今後の目標を教えてください!
今、お茶の値段は低迷していて、茶業者も減っていると言われています。理想論は、自社の経営を軸にしながらも、経営が厳しかったり自社工場のない地域の農家さんから生葉や荒茶(半製品)を買い取り、それを加工してお茶として販売していくことで、皆に利潤が回り、地域の茶業が維持される仕組みを作っていきたいと考えています。しかし、それは長い道のりですし、いくら理想論だけ言っても良いお茶が作れないと信頼も得られません。だからこそ今は、自分の腕を磨いて、それに値する茶師になることが目標です。
―最後に、学生にメッセージをお願いします!
学生のうちにしかできないことを、しっかりやっておくこと!僕は学生生活において後悔することはそんなにありませんが、社会人になって改めて、そのことを痛感しています。様々な活動に参加して良い仲間に出会うことは、すごく大事だと思います!
ちょっと気になる一問一答
Q 趣味は?
A バイクに乗ること。あと、最近は地域のおじさん達とソフトボールをしています。練習のある日は朝6時半から練習して、終わって9時から仕事。負けたときは悶々としながら草取りとかしてますね(笑)
Q 座右の銘は?
A 「師を見るな、師が見ているものを見よ」。 ある品評会で「○○さん(上位の方)に勝てた!」と嬉しさのあまりポロッと言った時に、より上位の方から「誰かと比べるのではなくトップを目指したほうがいい」と言われ、すごく胸に刺ささったのですが、まさにそれを表している言葉です。
Q 仕事をしていて「良かった!」と思える瞬間は?
A 自分の実力が上がっていくのが分かるとき。小さい頃から「不器用だ」と言われてきたのですが、負けず嫌いな性格もあり(笑)、嗅覚やお茶を見る目が洗練されてきていると実感できた時は嬉しいですね。
Q 好きな女性のタイプは?
A 明るくて、よく笑う子!
Q 好きな農機具は?
A 自分の体です!茶葉の状態を知るための触感や、お茶の香りや味を確かめるための嗅覚や味覚。特に茶業は五感を使う農業なので、自分の体を一番大切にしないといけないなと思っています。
※記載情報は取材当時のものです。
※無断転用・転載・改変を禁止します。引用の際は、当社までご連絡ください。