株式会社みやじ豚 宮治勇輔・昌義
「かっこ良くて・感動があって・稼げる」新3K農業を目指し、家族経営ながら独特の生産販売システムを構築し、自社ブランド「みやじ豚」を確立させた代表取締役社長 宮治勇輔さん。今回は、会社の根幹である生産を担う父・昌義さんに、お話を伺いました。
代表取締役社長 宮治勇輔さん(写真左)父・昌義さん(写真右)
(※当社発行の農業フリーペーパー「VOICE」31号/2015年夏号より転載)
異業種連携で、生産から消費までを一貫プロデュース!
―豚を飼育・管理する上で、どのような業種と関わり合いがありますか?
豚の生産には主に3つ、施設、餌、労働力が必要です。施設は、建設業者や土木業者に委託しています。餌は、国内の飼料メーカーは商社系と農協系の大きく2つに分かれます。昔はほとんど農協から買っていましたが、今は商社系の方が圧倒的に多いですね。
その他、豚の健康状態や飼育管理技術は、月に一回巡回してくれる獣医師から助言や指導を受けています。健康で美味しい良い豚を出荷できるよう、多くの異業種に支えられています。
―餌ですが、取引先を変えた理由は何かあるのですか?
理想とする肉質に仕上がるからです。法人化する前は全量を農協にグループ出荷していたので指定の配合飼料を使わないといけなかったのですが、法人化してグループ出荷から外れたのを機に自分で餌を選ぶようになりました。
それまでも肉質には自信があったのですが、餌を変えると飛躍的に美味しくなりましたね。成分分析をすると、旨味成分のグルタミン酸が今までの倍近くに増え、油の成分であるオレイン酸が今までよりもかなり多くなり、コレステロールの元になるリノール酸が少なくなるなど、昔から理想としていた豚に仕上がったんですよ。自分で研究して理想の形に近づけられるのは嬉しいですね。
―では、今はもう農協さんは利用されていないのですか?
いや、グループ出荷はしていませんが、豚は全量農協へ出荷していますし、餌も一部取っています。ただ、屠畜後、枝肉になった後の販売体系は、他の農家と大きく異なります。
一般的な養豚農家は、農場から屠畜場に出荷するまでが仕事で、その後は農協が全てやってくれます。ただそれだと、自分の豚肉がどう流通して誰が食べているか分からず、こだわって生産しても一律の価格になってしまいます。
そこで、「屠畜場で枝肉になった自社の豚肉を買い戻し、それを直接お客様に届けられる販売システム(ドロップシッピング※1)を構築しよう」と長男・勇輔が提案しました。ただ、自前で食肉加工場を持つには何億円もの投資が必要となり、うちのような小さな家族経営体ではハードルが高い。そこで、この方法にご理解いただける食肉加工卸会社さんと提携することで、その課題を解決しました。今、「みやじ豚」ブランドとして販売できるのは、食肉加工卸さんとの連携がとても大きいですね。
―BBQ(※2)やネット販売、マスメディア等で知名度が上がり事業規模も大きくなったと思いますが、家族経営にこだわる理由はなぜですか?
息子二人が本気でやりたいと言ってきたからだね。二人のやり方を応援し、理想通りの経営ができるのがこのやり方だから。長男・勇輔が営業をして、次男・大輔と私が生産をするという風に、完全に分業しています。その線引きがしっかりできているから対立も無いし、家族だからこそ築ける信頼もあります。
―最後に今後の目標を教えてください。
ようやく企業として軌道に乗り出したから、具体的に考えるのはこれからだね。でも俺はもう高齢化しちゃったから、息子二人が新しい方法をもっと取り入れて、どんどん頑張ってほしいね。
(※1)みやじ豚×ドロップシッピング
ドロップシッピングとは、「商取引の形態の一種で、自分では商品在庫を持たず、注文を受けた際にメーカーや卸売業者へ直接オーダーして販売する取引形態のこと」(引用:IT用語辞典バイナリ)を言います。
みやじ豚では、食肉加工卸会社と連携することで、この方法を確立しています。下記はそのイメージ図です(この方法を用いた豚肉の流れのみ記載)。
(※2)みやじ豚BBQ
生産者と消費者が直接会う機会をつくることで両方の思いをお互いに知る事ができ、みやじ豚のコンセプトである生産からお客様の口に入るまでの一貫したプロデュースを行うため定期的に開催しているBBQ。現在では100名を超える予約が毎回あり、数ヶ月待ちになる事もしばしば。
[URL] http://bbq.miyajibuta.com
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