大野農園株式会社 大野栄峰


(※当社発行の農業フリーペーパー「VOICE」30号/2015年春号より転載)

プロフィール

氏名 大野 栄峰(31)
出身 福島県石川郡石川町
略歴 大学卒業後、東京でモデル業をしている時に東日本大震災が発生。打撃を受けた地元・福島県と家族のために就農を決意。「オール福島を全国発信」すべく日々邁進している。

新しい農業の風を、地元・福島県に!

―就農のきっかけを教えてください。
 一番大きなきっかは、東日本大震災です。僕の実家は果樹農家ですが、小さい頃から農業への興味がなく、継ぐ気もなく、大学時代にモデルをしていたこともあり、卒業後は東京でモデル業をしていました。その頃、震災が起き、原発事故が起きた影響で、僕の故郷・福島県は大変なことになりました。
 両親は主に、全国約8,000軒のリピーターへの直接販売をしていましたが、検査基準は満たしていても風評被害の影響で収入が3~4割ほど落ち込みました。そんな時、父が「いろいろ大変なんだ」と愚痴をこぼしました。父は愚痴をこぼすような人ではないので、「このままでは両親が精神的に参ってしまうのではないか?」と不安が募り、「実家に戻って就農しよう」と覚悟を決めました。
 就農を決めた時、「それまで農業に携わったことがないからこそ、出来ることと出来ないことがある」と思い、父に「新しい視点で農業をしたい」と伝え、承諾してもらい、就農後すぐに法人化をして、新しい大野農園が始まりました。

―なぜ法人化されたのですか?
 家族経営を脱却したかったからです。発展するためには夢を持っている仲間と共に取組むことが大切だと思いますし、地域雇用のためにも通年で仕事を作る必要がありました。今では生産だけではなく、加工事業やピザの移動販売、他業種とのコラボレーション、農地を利用したイベント等にも取組んでいます。

―面白そうですね!詳しく教えてください。
 例えば、ピザの移動販売では、福島県産の果物や野菜、お肉等をふんだんに使用したピザをキッチンカーの中で作り販売しています。最初のコンセプトが「福島のおいしい食材で、オール福島を全国に発信したい」だったので、多くの方に召しあがっていただけるよう、1枚500円ワンコインで気軽に買える価格帯にしています。食を通して、地域農家こだわりの農産物や農業に興味を持っていただければ嬉しいですね。
 他業種コラボでは、例えば、「ビール離れが進んでいる状況を何とかしたい」という県内のビール会社さんとコラボし、ビールが苦手な人でも飲めるように桃やリンゴを使ったフルーティな果物ビールを開発しました。また、地元のJ3サッカーチームとのコラボでは、年間を通した農作業体験や収穫物の対面販売をしていただいていますが、サッカーチームは地域に根付いた活動ができ、当社はサッカーファンという新たな層へのPRが可能になります。どの取り組みも、お互いがWIN-WINの関係性になることを大切にしています。

―地域を大切にされていますね!今後はどのような展開を考えていますか?
 地域の農業者が連携し合い、大きな力をつくりあげていきたいですね。個々の農家が強くなることは前提条件ですが、その上で連携することで、認知してもらうことと、地域の活性へ繋がればと考えております。
 また、他業種とのコラボもさらに進めたいと思っています。「なんでこの業種と農業が!?」という風に「興味」の視点からカタチをつくることで、農業や当社のことを知ってもらい、実際に足を運んでいただきたい。誘客にもより力を入れたいと思っています。

―最後に学生へメッセージをお願いします!
 農業は、単に作業をしていれば良いのではありません。だからこそ当社では、生産・営業・経理を分けず全てに携わっていただきます。お客様のための「ものづくり」。気持ちのこもった農産物を届けるためには、お客様との交流をしっかり持ち、経営も肌で感じてほしいと思います。特に農業は未開拓な部分が多いので、可能性も広がっていますよ!

ちょっと気になる一問一答

Q 農業のやりがいとは?
A 未開拓な部分を開拓していくことです。まだ誰もやったことがない取組みや、「この地域では初!」というイベントなど、新しいことに挑戦できる点が面白いですね。

Q 好きな農作業は?
A 剪定作業です!当社のこだわりは、剪定作業と土づくり。果物の品質に大きく関わります。実は当社のロゴマークは剪定バサミがモチーフですが、剪定作業が最も重要ということと、10年後・20年後の農業を切り開いていく、という意味が込められています。

Q 趣味は?
A 今は360日くらい仕事に費やしているので、ほぼ休めないのですが、サイクリングが気になります。

Q 好きな女性のタイプは?
A 僕と一緒で、楽天的な考えの人。妻は違うタイプの人ですが(笑)

Q 好きな言葉は?
A 「温故知新」です。今、僕が新しい取り組みが出来るのは、両親がこの農園を築き上げてきたからです。土台があるからこそ今があるので、昔の人たちの想いは大切にしたいですね。


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