株式会社サラダボウル 代表取締役 田中進

トマトを中心に、野菜の周年栽培等をされている同社では、農業生産にとどまらず、次世代の農業経営者育成にも尽力されています。今回は、代表取締役 田中進さんに、農業に求められる人材像を中心にお聞きしました。

(※当社発行の農業フリーペーパー「VOICE」29号/2014年冬号より転載)

自立心があり、自己否定できる人は、伸びる!

―農業に求められる人材像とは?
 自立心があり、自己否定できる人です。自立心とは、例えば、栽培面で次から次に問題が起こったとき、気候や他人のせいにせず、自らの課題として捉え、その課題を解決するような行動ができる人。また、自己否定とは、自分の考えや自己成長が「まだまだ足りていない」と思い、常に努力を重ねられる人です。そういう人は心がニュートラルなので、目の前のチャンスを上手く掴むことが出来ます。それに当社では「5S」(整理・整頓・清掃・清潔・躾)と「カイゼン」(トヨタ生産方式の主要な考えの一つ)を常に行っていますが、自己否定が出来る人は「カイゼン」も出来ますからね。

―どちらも製造業の概念ですね。
 農業の問題は農業界だけでは解決できないですからね。他産業の経営ノウハウを取り入れたり、様々な業種や業態と連携するなど、広い視野から解決策を見出すことが大切です。地域の問題にしてもそうです。一つの地域を見るだけではなく、多くの地域と結びついたり、海外とも繋がることで解決できることもある。だから私は、国内も海外も分け隔て無く飛び回る。「周りを巻き込む力」が事業を創ることであり、経営者の仕事だと思います。もちろん私がそのように行動できるのは、現場を任せられるスタッフの存在が大きいことは言うまでもありません。

―役割分担と責任分担が重要なのですね。ところで田中さんのグローバルな視野は、前職(銀行マン)での経験が大きいのですか?
 それは分からない。当然、過去のキャリアによって今の自分がありますが、もしかしたら違うキャリアを積み重ねていても今と同じ思考になっていたかもしれません。言い方を変えると、「仕事の質」は「生活の質」によって形成されていくものなで、日々の積み重ねの方が重要なのです。例えば当社では、時期によって前後しますが、朝5時から1~2時間、スタッフ同士で自主的な勉強会をしています。

―随分早い時間ですね!
 重要なのは「早朝」という開始時間ではなく、「毎朝、勉強をしてから仕事に行く」という習慣です。その習慣を持った人が3年後どうなっていると思いますか?毎日普通に仕事をしている同年代よりも2倍も3倍も高い「仕事の質」になっていると思いますよ。そのように、自分の中のスタンダードをどの高さに設定するかで、将来は大きく変わります。
 特に農業は、どんな産業にも負けないほど、アカデミックでクリエイティブな産業。しかも農業自体、自分たちの意思で、自分たちの想いを表現できる時代になってきました。いろんな発想や気付き、改善していく手段を学ぶことで、チャンスも大きく広がります。

―これから農業界に入っていく学生たちにもチャンスがありますね!最後に、学生へメッセージをお願いします。
 農業はすごくダイナミックで面白い産業!まだまだ可能性も広がっています。その可能性を自分の中に見出してほしいですね。例えば農業法人に就職した場合は、「その法人で何ができるか」ではなく、「その法人に入社することで、自分はどのような可能性を広げられるか」を考えてほしい。また、農業は「地域に就職する」という側面も持っていますが、「地域の雇用」こそダイナミック。地域と関わり、地域の主体となり、広い視野を持ちながら地域と一緒に活動することで、次代の農業を創ってほしいですね。


(左)始業前(朝5時~)の勉強会。活き活き感が伝わります!
(右)スタッフは20~30代が中心。独立希望者も多い。

会社情報

【住 所】 山梨県中央市西花輪3684-3
【URL】 www.salad-bowl.jp


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