_ƊEn}

農業×学生

【学生スタッフ】 活動レポート

今回は、当社の学生スタッフ松田が参加したインターンシップの内容やそこで得た学びについてレポートします!(掲載:2019年5月)

プロフィール

● 松田 京丈(まつだ けいじょう)
熊本県出身。サッカーをこよなく愛する大学2年生(2019年3月当時)。株式会社NOPPOにて農業フリーペーパー「VOICE」の制作に携わる。好奇心が旺盛で、人と話すことが好き。何事もより良くしたいという思いが強く、将来は記者になることを目指している。



八街市インターンシップ体験記
【インターンシップ期間:2019年3月4日~8日】

参加のきっかけ

 長期休暇に入り、農業を通して新たな刺激を受けたいと思っていたところ、大学の掲示板に農業体験インターンシップの募集がされていることを発見。即座に参加することを決め、千葉県八街市に向かった。

今回のインターンシップに参加する目的は、
1、実際に農業の現場に行って体験することで、知識を深めたい。
2、農家さん・市役所の方の話を聞き、幅広い考え方を持ちたい。
3、話す・聞くことのスキルをより磨き上げる場にしたい。
の3つ。

 目的もしっかりと決め、事前に提出する書類やお世話になる方とのやり取りなどに追われていると、あっという間に時間が過ぎ、5日間のインターンシップの初日を迎えるのであった・・・。

 ちなみに、このインターンシップには、私ともう1名の学生、合計2名で参加しました。(もう一人は、私と同じ学科に所属している友達です。)

【1日目】 受入先: 小山 直樹さん

 さあ、これから5日間頑張るぞ!と意気込んでいたのですが、初日からなんとあいにくの雨・・・。

 そのため、この日は屋内での作業になりました。
 午前中は、小山さんの農業経営の仕方や就農までの経緯、現在行っている活動などをスライドを用いてご説明いただきました。
 実家は農家であったものの学校卒業後すぐに就農せず、他業界に自ら足を踏み入れ、エンジニアとして約10年働いた後、親御さんとは別経営で就農されている小山さん。農業の当たり前にとらわれることなく、斬新かつ新鮮な考え方をもっておられる小山さんのお話は、とても刺激的でした

 そして午後は、屋内作業場でニンジンの調整と落花生の殻剥きを行いました。
 下の写真はニンジンの調整を行っているところです。   
(左=私、右=小山直樹さん)

 包丁を片手に持ち、ニンジンを出荷できる状態に切る作業なのですが、どうにも私はこの作業が周りの人より遅くて・・。「日頃から料理をしているパートさんは早いよ~」と小山さんに言われ、私はこの作業も下手な上に料理もできないのかと、雨の音にかき消されながら、実は心にダブルパンチを食らっていました。
 それでも私は、小山さんの作業を真似して、早く正確に作業することに努めました。この後に行ったニンジンの洗浄においても、もう一人のインターン生と協力しながら効率性を考え、作業を進めました。

農家さんのために本気で動く

 このように作業を進めることが出来たのはある一つの考えがあったからです。
 農業体験中に最も大切なことは、「農家さんのために自分ができることを考え、精一杯尽くすこと」だと思っています。当たり前のことのようですが、無償の農業体験インターンシップだと、これをできる人は実は少ないんです。別に、ゆっくりやっても早くやっても、働く時間は決まっているし、報酬は何ら変わらないからです。
 それでも、農家さんのために自分ができることを考え実行することで、農家さんの気持ちを知ることが出来たり、他では感じられない達成感が得られたりします。そして何より、より良い時間を過ごすことが出来るのです。

 このように考えるようになったのは、あるきっかけがあります。
 それは私が大学2年生の夏に参加した、『北海道ネイチャーダイブプログラム』という2週間の農業体験インターンシップです。
北海道インターン・ネイチャーダイブプログラム https://nougyou-intern.com/

 そのプログラムに参加したとき、私は最初、終わる時間ばかり気にして、だらだらと時間を過ごしていました。しかし、農家さんと共に作業していく中で、農業のリアルな悩みや農業に対する熱い想いを聞き、「どうにかして農家さんを助けられないか」と考えるようになりました。すると、農作業中に自然と「農家さんのために自分ができることを考え、行動する」ようになりました。
 その時に学んだことを改めて思い返しながら実行に移すことで、とても良い1日を過ごすことが出来ました。

【2日目】 受入先: 米田 将之さん

 充分睡眠をとって迎えた2日目!体力は有り余っています。気持ちを後押ししてくれるかのようにとても良い天気! 農業は天気とにらめっこをしながらの仕事なので、普段何気なく生きていたら当たり前に見える青空でも、とても幸せに感じられます。今日も頑張ります!

 今日の作業内容は・・・、一日中雑草抜きです!
 言葉の通り本当に朝から夕方までずっと除草作業をするのですが、想像以上に大変で・・・。上の写真の右下のような雑草が密集しているところは腰を降ろしたまま作業をし、写真の左側のような雑草がまばらに生えている所は、中腰になり歩きながら作業をします(下の写真のように)。この中腰を長く続けていると、本当に腰が痛くなって・・・。

 その上、丸一日雑草抜きという同じ作業なので、何度も心が折れそうになり、「心と腰どちらが先に折れるだろうか」など普段考えないようなことを想像しながら作業をしていました。しかし、この雑草抜きは農業の中で欠かせない作業であり、「農業のリアルを体感させてもらっている!」とポジティブに捉えて作業を進めました。
 私の1.5倍くらい作業が早いパートさんも含め3人で協力して作業ができたので、なんとかやり切ることが出来ました。一日中同じ作業を終えた時は、とても達成感がありました!
 写真で両手を挙げているのは私です。達成感に満ち溢れていますね(笑)

 そして何といっても驚いたことがあるのですが、先述した『北海道ネイチャーダイブプログラム』に、米田さんも十数年前に参加していたのです!時は違えど、同じ土地で農作業をした二人が、遠く離れた地で出会えたことにとても感動しました。

自然に囲まれた中で自分を振り返る

 「一日中」、「同じ作業」、「単純」。農業にはそんな作業がたくさんあります。この日の雑草抜きもきつくて退屈で、誰も進んでやろうとしないネガティブな作業のように思った人も多いかもしれません。でも、私はこの時間はとても貴重で大切だと思っています。
 便利な世の中になり、豊かな生活を送れるようになったはずなのに、勉強や仕事、遊び、移動、家事など、時間に追われて過ごす人が多くいるように感じられます。その上、人間が利用する存在であるはずのスマートフォンも、過剰に依存してしまうことで、逆に人間がスマホに翻弄されているかのように思えます。そして本来考えるべき物事を考えず日々過ごしている人が多いのではないでしょうか?
 そこで、自然に囲まれた中で単純な農作業をしていると、今の自分を振り返ることが出来るのです。普段時間に追われた生活をしていると、自分のことに長い時間をかけて考える暇などないのですが、農作業を通して自分を振り返ることで、気持ちを改めてより良い時間を過ごすことができるのです。
 ですから、この日のようなすぐにでも辞めたくなるような雑草抜きであっても、実はそれはとても貴重な時間だと思います。 その大切な時間を過ごすことが出来たことに、私は米田さんにとても感謝しています。

【3日目】 施設見学

 さあ!折り返しの3日目!
 昨日の作業のせいか、体中が筋肉痛です・・・。
 でも大丈夫!今日は農作業をせずに、様々な施設を見学させて頂きます。

 まずは、『グリーンやちまた選果場』を見学しました。
 ここでは農家さんが持ってきたニンジンを機械や人の目で大きさ・品質ごとに分類し箱に詰めるまでの一連の流れを見て回りました。ニンジンの出荷最盛期には1日1万ケース(1ケース10kg)を優に超える量を取り扱うそうで、八街のニンジンがこの時期の首都圏へのニンジンの供給を支えるといっても過言ではないそうです。


 その後は、『落花生研究室』にて、千葉県の落花生について説明をして頂きました。この施設は日本で唯一の落花生育種機関であり、世界中から集めた品種を交配に活用し、これまでに約15種類の品種を生み出しています。現在、落花生は様々な問題を抱えていますが、千葉県では新品種の育成や栽培の機械化・省力化など、解決に向けて取り組んでいるそうです。


 お昼休憩の後は、『林地開発』について市役所職員の方のお仕事にご一緒させて頂きました。
 一言で林地開発と言っても、法律などが絡んでくるため内容はとても複雑で、私は説明を受けながら頭をフル回転させていました。簡単に言えば、林地開発をしたいという申請を受けたなら、条件を満たしているかを確認し、開発前・開発中・開発後、随時現場を視察しに行くというお仕事です。今後農業に関わっていく際、法律や農政がしっかりと理解していれば、より面白くなることに気づきました。難しいことですが、勉強していきたいと思います!

 余談ですが、なんだか不思議な木があってボーっと見ている時もありました。(笑)


 そして、最後は『北総中央農業水利事業所』にて、事業の説明を受けました。この事業によって、安定的な用水補給と地下水からの水源転換を行い、農業経営の安定化を図ることが出来るそうです。

 一日中、新しく学ぶことがたくさんあり一時は頭がパンクしそうになりましたが、改めて整理してみると、八街市の農林業を働かせるための重要な一端をそれぞれが担っているのだなあと感銘を受けました。様々な施設を見学させてもらったことで、農業をさらに幅広い視点で考えられるようになったと思います。


 そして夜には、受入先の農家さんたちと親睦会を行いました。普段繋がるはずのなかった人たちが、インターンシップに関わることで輪になって語り合うことが出来るのはとても素敵なことだと感じました。
 「八街市の農業をより良くしていきたい」。「このインターンシップももっと大きくしていきたい」。このような農家さんの声を聞き、まず、残りの2日間を全力で取り組もうと改めて決心しました。そして、八街市の農業のために、八街市インターンシップのために自分ができることを考え行動していこうと思いました。

【4日目】 受入先: 落合 久美子さん

 時間がたつのはあっという間。残すインターンも2日間となりました。
 この日もう一人のインターン生は別の受入先へ行っていたので、ここでのインターン生は私のみ。悪天候で雨がザーザー降っているのですが、ハウス内での作業なので、心配は必要ありません!

 この日は、ネギの定植、収穫、パネル敷きを行いました。上の写真は、ネギの定植を行っている所です。

 農業と言えば、泥だらけになるイメージを持っている人も多いと思いますが、実はこの日私は土を一度も触っていないんです!なぜなら、この日は水耕栽培のお手伝いをさせて頂いたからです。この白いパネルの下に水があり、その水に肥料を混ぜて栽培するそうです。写真右の小さなネギが、左のように大きくなるまで生長するんですね。なんだか不思議な感覚を覚えました。
 年間に6回ほど栽培するというネギ。実はまだ栽培し始めて2年目だそうです。以前はホウレンソウをメインで栽培していたそうですが、近年上昇し続けている気温のせいで不作に陥ったため、夏の暑さにも耐えられるネギを栽培するようになったそうです。しかし、ベテランの農家さんでも苦労することは未だにあるそうで、「農業は一筋縄ではいかないのだなあ」と、落合さんの話を聞いて改めて感じました。ですがその一方で、一筋縄ではいかない所に農業の本当の面白さが隠されており、農業界に数多くある問題を解決していくことが、これから農業に関わっていく人の使命であるとも感じました。

農家さんは温かい

 私がなぜ農業が、農業体験が好きなのかというと、農家さんがとても温かい心を持っていらっしゃるからです。特に、この日に受け入れて下さった落合さんはまるで母親のように接してくれて、嬉しさがこみ上げてきました。自然と戦い、作物を育て、そして自分と向き合う。そんな毎日を過ごせているからこそ、温かい澄んだ心で過ごすことができるのでしょうか。この温かさを力に変え、これまでお世話になった農家さんに恩返しをするために、「農家さんのために」という強い思いを持ちながら農業に関わっていきたいと思います。

【5日目】 受入先: 加藤 康一さん

 あっという間に最終日・・・。
 「やっと終わりだ!」という気持ちがないと言ったら嘘になりますが、それよりも「農業インターンが今日で終了して寂しい」という気持ちの方が勝っていました。

 さあ、それでもこの日も普段通り作業はあります!お気づきの方もいらっしゃるかと思いますが、今回のインターンでは毎日受入先が異なります。そのため、毎日、自己紹介と作業の説明を受けるところから始まります。
 本日もそれは変わらず、最初に自己紹介をし、今回参加した目的や学びたいことなどを伝えました。さすがに5日目ともなると自己紹介も慣れてきました(笑)。説明を受けたあと、早速作業開始!

 この日は、ハウスにてスイカの定植と袋掛けを行いました。屋外は冬の寒さで、長袖長ズボンでちょうど良いくらいなのですが、ハウスの中が驚くほど蒸し暑くて・・・。その上、ハウスを出たり入ったりするのに合わせて、服を脱ぎ着し、気温も大きく変化するので予想以上に体力を奪われました。

コミュニケーション力を磨くことが出来る

 農業体験インターンシップでは、農業のことを学べることはもちろんですが、それに加えて会話力も大きく成長できるチャンスがあります。その機会は、インターン中に出会う人との会話にあります。まず、自己紹介において限られた短い時間で、自分のことを相手に分かりやすく伝えなければなりません。そして、相手の考え方も理解した上で、会話を円滑に進めていく必要があります。
 この5日間のインターンでも、会話をする際は話し方に最新の注意を払い、傾聴(相手の話していることに耳を傾けること)を心がけました。そうすることで受入先の皆さんとコミュニケーションを深めることができたと思います。また、こうしたコミュニケーション力は、社会に出た時に、どんな能力よりも必要とされ重宝される能力だと思います。どんなにコミュニケーション能力が低い人でも、場数をこなし、相手との会話をより良いものにするために考えて行動すれば、必ず向上すると考えています。


まとめ

 雨の中始まったこのインターンシップでしたが、気づけば5日間が過ぎていました。自分のやりたいこと・見たいことに合わせて内容を変更することが出来るこのインターンは、他の農業体験インターンシップにないとても充実した時間を過ごすことが出来ると思います。自分の意思・目的をしっかり持ち進んで行動できる人には是非参加してほしいと思います。
 この記事が、八街市農業インターンシップに参加する人のきっかけとなり、このインターンが今後より活発に、そして八街市の農業がより生き生きとしたものになることを心から願っています。
 最後になりましたが、受け入れて下さった農家の方々をはじめ、見学をさせて頂き、説明をしてくださった施設の方々、そして何より私たちインターン生2人のために本当にたくさんの準備をしてくださった八街市農政課の島田様には本当に感謝の気持ちでいっぱいです。ありがとうございました!

リンク

 八街市
⇒ https://www.city.yachimata.lg.jp/


※記載情報は取材当時のものです。
※無断転用・転載・改変を禁止します。引用の際は、当社までご連絡ください。