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種苗

【農業×海外】 タキイブラジル

今回のインタビューテーマは「農業×海外」。
近年のグローバル化に伴って、国内の農業界企業も海外に進出し事業規模を広げています。
その農業界の中で最も川上に位置するのが種苗業界です。国内をはじめ、世界中の人々の食と農の基盤を支えています。今回は、そんな種苗業界のリーディングカンパニーであるタキイ種苗株式会社で海外を舞台に活躍されているタキイブラジルの松下宏美様にお話を伺いました。

(取材:2016/10/09、ブラジル サンパウロ市の飲食店にて、記者・松崎|掲載:2017/1/16)



―はじめに御社について教えてください。

 当社は今年(2017年)で創業182周年を迎えます。種苗メーカーとして、常に時代のニーズに対応した特性を備える野菜や花のタネを開発してきました。現在では世界約120の国や地域へ商品を販売しています。従業員数は約750人ですので社員同士の顔もほとんどわかり、非常に風通しの良い会社ですね。

―世界中で事業を展開しているとてもグローバルな会社ですね。現在駐在されているタキイブラジルについても教えていただけますか。

 農業大国であるブラジルをはじめ、コロンビア以南の南米での販売を管轄しているのがタキイブラジルです。現在日本人駐在員が2名、現地スタッフを含めると全員で25名が働いています。

―ブラジルだけではなく南米全体を管轄しているのですね。

 そうですね。私もブラジル国内ではなく、エクアドルやコロンビアといったブラジル以外の南米を担当しています。
 メインの業務は、代理店との商談や農家さんへの訪問、そして本社とのやり取りです。中でも、タネの直接の販売先となる各国の代理店とは長い付き合いがあり、各地域の気候風土や食文化にあった商品を推進・販売していただいています。
 代理店へは定期的に訪問し、品種ごとの売り上げを確認します。売り上げが下がっている商品があった場合は、なぜその商品の売り上げが下がっているのか原因を調べ、それに対して「他のメーカーの商品はこういった点が弱いですが、当社のこの商品ならこういった利点があるのでいいですよ」というような具体的な提案をします。常に農家さんの目線で提案することを心がけていますね。ですから自社商品だけではなく、他社商品も含めて幅広い知識が必要です。また、同時に現地の情報収集も行います。先日も玉葱産地訪問のためにエクアドルに行ったのですが、その際に隣にキャベツ畑があったため、現在使用しているタネの種類や栽培方法に関して話を聞き、当社の商品を提案しました。周辺情報も確認し会社に持ち帰り共有しておくことで、いつでも必要な時に活かせるよう準備しています。
 さらに代理店だけではなく実際に農家さんを訪問し、技術的な指導も行います。栽培過程で問題が起こった場合は、原因を突き止め、的確なアドバイスを行うといった具合です。
 ちなみに私は文系出身ということもあり、こういった技術的な指導が必要な場合は農学部出身の現地スタッフと共に出かけています。

―文系出身ですか!どのような経緯で入社されたのでしょうか。

 大学時代にスペイン語を勉強していたので「語学を活かして仕事をしたい」と考えていました。就職活動の際は「海外で働けるかどうか」を軸に、大小問わず商社からメーカーまで幅広く考えていました。特別、農業や種苗にこだわりを持っていたわけではありませんが、実家が兼業農家なので漠然と興味はありました。
 中でも当社は、種苗に関して唯一無二の商品をたくさん扱っています。そういったオンリーワンな商品を世界中に広めたいという想いから当社を志望し、「海外営業職」で採用され入社しました。

―学生の頃から海外で働きたいという強い気持ちがあったのですね。入社直後から海外で活躍されていたのですか。

 私は入社して約10年になりますが、1年目と2年目は日本で農業や仕事の基礎を学びました。

 当社では入社1年目に本社や農場で研修があります。当社は京都府に本社があり、滋賀県に研究農場がありますが、その農場には当社が運営する「タキイ研究農場付属 園芸専門学校」も併設されており、約4ヶ月泊まり込みで学生さんと一緒に勉強します。品種開発を手掛けるブリーダーの講義を聞いたり、実際に畑で管理作業を行いながら、植物生理の基礎について学びました。また、本社研修では、販売用種子の品質を確認する部署や、種子管理~製品化を行う部署での仕事を通じて、高品質種子の販売に至るまでの過程についても理解を深めます。営業職であっても農業に関する専門知識は必要になってくるので、入社1年間を通じて基礎知識をしっかり身につけます。研修を通して、他部署の人間とも顔見知りになるので、その後も何かあった時に連絡が取りやすくなるというメリットもあります。
 2年目は基本的な輸出業務を通して貿易実務を身につけます。特に輸出業務では、営業担当者とアシスタントがペアになって仕事をしますが、営業担当者はアシスタントの仕事のチェックもするので、アシスタントの仕事を理解する必要があります。それもこの期間に身につけていきます。
 そして、3年目から本格的に海外へ出張できるようになります。

 私も最初のうちは京都本社から出張ベースで海外営業を担当していました。最初は欧米、次にタイとベトナム、その後、結婚出産のため一時お休みをいただき、復帰後はまた欧米を担当していました。その後、2年間の南米担当を経て、昨年(2016年)4月からタキイブラジルに駐在しています。単身赴任ですので、夫と子どもは日本にいます。

―出張ベースから駐在員に変わったことで、仕事にはどのような変化がありましたか。

 出張ベースの時と比べると、より深く現場に入り込める環境で仕事ができるようになりましたね。時差も少なく、距離も近いため、メールや電話でのやり取りがタイムリーにできますし、実際に畑へ行き作物を見られる機会も増えました。駐在だからこそ、仕事の幅もより広がりましたし、チャンスをくれた会社にも感謝しています。何より、理解して背中を押してくれた家族には、本当に感謝しています。
 また、プライベートの過ごし方も変わりました。サンパウロには様々な業界で働く日本人駐在員がたくさんいるので、食事やスポーツを通して駐在員同士の交流が増えましたね。国内では他の業界の人と関わる機会が少ないので、バックグラウンドの異なる人の話を聞けるのはとても楽しいです。

―海外での仕事を通して、どのような時にやりがいを感じますか。

 やはり農家さんに喜んでもらえた時が一番嬉しいですね。自社商品の提案から始まり、収穫まで携わるため、良い作物が収穫できて「ありがとう」と言われると、「この仕事をやっていてよかったな」と思います。そして、出来た作物が世界中の人々に食べてもらっていると考えると、食の根幹を担う、非常にやりがいのある仕事だなと思いますね。
 また、海外で働いていて「面白いな」と感じるのが、様々な部分で各国の特徴を見られる点です。例えば畑の畝(うね)の作り方一つとっても、各国の国民性が見て取れてとても面白いですよ。

―やはり仕事をする上で、やりがいや面白さを感じられるかどうかはとても大切ですね。

 そうですね。仕事をするためにはたくさん勉強しなければいけないことがあります。しかし、興味があれば勉強も続けられますよね。
 これから就職活動をする学生さんには、ぜひ「自分が興味のあることは何か」を考え、自分にマッチしたやりがいや面白さを感じられる会社と出会ってほしいと思います。個人的には、就職活動は業界にこだわらず、様々なところを見た方が良いと思います。いろんな業界の話を聞く機会は就活くらいしかないですからね。ただ、その時期は授業やゼミもあり、本当に忙しいと思います。私も「説明会の予約をしたけど授業でどうしても行けなかった」という経験もあります。「自分のできる範囲で」というのが前提条件ですが、多くの社会人の話を聞くことで、将来自分が働く姿をイメージしやすくなると思いますよ。

―貴重なアドバイスをありがとうございます。最後に種苗業界や御社に興味のある学生に向けて、一言お願いします。

 当社には、日本をはじめとしたアジアではある程度の知名度と実績があります。しかし欧米や南米などではまだ十分とは言えません。よく言えば、守るものはなくて攻めていくだけ。的確なアドバイスをくれる人もたくさんいるので、国内外の農業分野で若い時から積極的にチャレンジしたい方には合っていると思います。もし現時点で英語があまり得意ではなくても、基礎さえできていれば英語を使った業務を通して上達するので大丈夫です。少しでも興味のある方は、ぜひ当社の採用HPもご覧ください!


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