東京メトロが挑む!植物工場野菜の魅力

最近少しずつ広まっている植物工場に注目!
今回は、1日平均724万人が利用する東京の地下の交通網を支える東京地下鉄株式会社(東京メトロ)が取り組む水耕栽培について、同社 事業開発本部 流通・広告事業部 戦略担当 柴崎さん(写真)にお話を伺いました。


(※当社発行の農業フリーペーパー「VOICE」43号/2018年夏号より転載)

東京メトロが挑む!植物工場野菜の魅力

―なぜ水耕栽培を始めたのですか?
 当社のメインの事業は鉄道ですが、新規事業にチャレンジしようとなり、平成26年12月に、完全人工光型植物工場を用いた水耕栽培を始めました。
 きっかけは、まず一つは高架下の遊休地の有効活用のため、もう一つは、世の中で食への安心・安全の興味が高まっている中、当社が鉄道事業で心掛けている安心・安全への想いが植物工場でも活かせるのではないか、と考えたためです。
 植物工場は東京メトロ東西線 西葛西駅~葛西駅間の高架下の50坪ほどの土地にあります(右写真)。この植物工場は高架下を管理しているメトロ開発株式会社(グループ会社)と協同で運営しており、現場で栽培をしているのもメトロ開発の社員とパート社員です。社員には車掌や運転士をしていた当社OBもおり、パート社員も含め、植物工場で働くのが初めての人ばかりですよ。

―そうなのですね!それでは、具体的な栽培方法などを教えてください。
 完全人工光のもと、土や農薬を使わず液肥を使い、種まきから栽培、収穫、パック詰めをし、自社の冷蔵車で配送までしています。
 主なお取引先様は都内高級ホテル様や百貨店内の高級スーパー様などで、お取引様のニーズも取り入れながら、レタス、ハーブ、ベビーリーフなど11種類の野菜をプラントと呼ばれる5段式の棚で栽培しています。プラントは7基あり、天候に左右されず安定した品質で1日に400~450パック生産できます。

―植物工場および水耕栽培だからこその特徴はありますか?
 土がつかず、菌の付着も少ないため外葉まで無駄なく美味しく召し上がれます。アクが少ないのでお子様や野菜が苦手な方も食べやすいのも特徴です。品質も安定しており、たとえば昨年秋に台風の影響で露地物野菜が高騰したときも安定して供給できました。

 

―水耕栽培の難しさもありますか?
 まだまだ業界自体歴史が浅く、私たちもイチから勉強を始めたので、栽培面での苦労はいろいろありますね。例えば、栽培はプラントメーカーさんのサポートを受けつつ進めているのですが、最初の頃はプラントメーカーさんのある県と東京都の環境の違いが影響し、うまく育たず改善するまで大変でした。今は安定していますが、同じ環境でやっているはずなのに育ち方が違ったり、水やりの仕方ひとつで芽が出ないこともあります。生き物相手なのでうまく育たないこともあり難しいですね。
 あとは衛生管理に非常に気を遣っています。虫の混入を防ぐためにプラントがある部屋までは扉が5枚あり、入室時の手洗いや消毒も徹底していますし、商品も毎月第三者機関に出して菌検査をしています。やりすぎくらいでちょうどいいかなと考えていますので、見学に来た方からはよく「食品工場のようにきれいだ」と驚かれます。
 また、販売先という面では差別化が課題です。私たちのような異業種からの参入も含め植物工場自体が増えており、市場が拡大している中で付加価値の高いものを作るとなるとノウハウがいりますし難しいところです。

―今後の目標を教えてください。
 すでに「とうきょうサラダ」という商標を取得していますが、今後もしっかりブランディングをしていきたいと考えています。既存のお取引様も東京産であることに興味を持ってくださっていますし、私たちも地産地消に貢献したいとも考えているので、今後もブランディングを意識しながら、東京を中心とした様々なお店とのコラボや加工商品の展開なども考えています。商品については「色味がある品種がほしい」といったご要望も多いのですが、人工光では色を出すのが難しいので現在研究を進めています。
 また、植物工場はまだまだ狭い業界なので他の企業様とも積極的に意見交換をしていますが、50年・100年先を見たらこれが主流になってくると思うので、この業界をリードしていく方がもっと出てくるといいですね。

―最後に学生に一言お願いします!
 学生のうちはしっかり勉強したり、やりたいことを沢山やってほしいですね。就職活動に限っていえば、選り好みしないで色んな企業を見た方が良いと思います。本気でぶつかれば本気で答えますし、新卒というパスポートを使って悔いのないように頑張ってください!


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