地域農業に活力を! ~国家戦略特区および「農家レストラン設置に係る特例」の活用例~

 「地方創生」「国家戦略特区」「規制改革メニュー」について耳にする機会もあるかと思いますが、実際に活用している経営体ではどのような取組みをされているのでしょうか?
 今回は、それらを活用して事業展開されている農業法人(有)ワイエスアグリプラント 兼 そら野テラス 店長 藤田友和さんにお話を伺いました。

(※当社発行の農業フリーペーパー「VOICE」43号/2018年夏号より転載)

地域農業に活力を!
~国家戦略特区および「農家レストラン設置に係る特例」の活用例~

―「そら野テラス」では、農家レストラン・デリカ・直売所・いちご狩りが楽しめますが、設立・運営は農業法人である御社がされていると伺いました。
 はい、当社は米と大豆を中心にした農業法人です。平成26年に新潟市が「国家戦略特区」(※1)に指定されたことをきっかけに「農家レストラン設置に係る特例」を活用し、ここを設立しました。

―特例を活用すると農地を転用することなく農家レストランを建設できますが、ここも元は農地だったのでしょうか?
 そうです、ここには稲の育苗ハウスがありました。もともと当社では平成15年から直売所「あぐりの里」を運営しており、その後、自社米を加工・販売する「おにぎり館」、農閑期の雇用を生み出すために始めたいちご生産、その発展形としていちご狩りをしていました。その中で「お客様がゆっくりできるカフェを作りたいね」という話になり平成23年から構想を練っていたのですが、農地法や農振法(※2)、都市計画法など色々な法律の壁にぶちあたり進めることができませんでした。そんな時に特区に指定されたので、農家レストランを設立し、併せて直売所等もリニューアルして今の形になりました。運が良かったんです。


―歴史がありますね!ところで農業と農家レストランを両立させるメリットはどのような点にあると思いますか?
 資金繰りですね。特に米農家の場合、例えばJA出荷であれば秋の収入が1年間の収入になりますが、そうではなく、常にお金が回る点は経営的なメリットがあります。また、自社のお米を直接販売しているので利幅が大きいですね。それに、お客様から直接「美味しい」と言ってもらえるのも喜びです。ただ、建物の維持費や借入返済、スタッフの人件費など様々な費用がかかるので手放しに良いとは言えません。それに、「そら野テラス」は始まってからまだ3年目なので「成功した」とは言えませんね。やはり継続が大変なので、10年後まで続いてこそ「成功した」と言えるかなと思っています。

―これからの展開も楽しみですね。最後に今後の目標を教えてください!
 当社の一番の使命は、この地域の農地を守ることです。地域には高齢の農家が多いので、もし辞めるとなった時は、その田んぼを荒らさないよう、しっかり受け継いで守っていきたいと考えています。耕作面積が増えれば人材も必要なので今から育成していきたいと考えていますし、「そら野テラス」の存在が当社の雇用の好影響にも繋がればと思います。


(※1)国家戦略特区とは
特定の地域や分野を限定して規制緩和や税制措置などを行うことで、企業の投資や人材を呼び込み、地域の活性化を目指す政策です。新潟市は、平成26年5月1日に「大規模農業の改革拠点」として国家戦略特区に指定され、高品質な農産物、全国有数の食品製造力を活かし、農業の国際競争力強化の拠点形成を目指しています。 (「新潟市革新的農業実践特区(パンフレット)」より

(※2)「農業振興地域の整備 に関する法律」の略

藤田店長に聞く!農業への想い

―就農のきっかけを教えてください。
 私は農家の生まれですが、就農を決めたのは社会に出てからです。小さい頃は農業が嫌で嫌で、農家であることに劣等感を感じていました。しかし、大学卒業後に入社した農業機械の販売会社で営業をしている時にいろいろな農家さんに出会い、なかには稼いでいる農家さんもいて「やり方次第なんだな」と思いました。また、「農家は生活も心も豊かで温かいな」と感じ、「農家も意外と悪くないな」と思うようになりました。その頃すでに父親が当社(有限会社ワイエスアグリプラント)を設立しており、様々なタイミングが重なり当社に転職・就農しました。入社当時は米と大豆の生産を担当していました。

―店長をされたのは生産よりも販売に興味があったからですか?
 そうではなく、「米農家を良く見せたい」という気持ちが強いですね。僕はマイナスの感情からスタートしているので「何かを変えてやりたい」「格好悪い農家のままでいられるか」という気持ちが強くあります。「米農家だってこういうことが出来るんだぜ」と見せたいですし、イチ農家でもこういうことができることを若者に知ってほしいと思います。

公式サイト

 そら野テラス ⇒ http://sola-terra.jp/


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