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【連載】 日本農業経営大学校 学生レポート

このコーナーでは、日本農業経営大学校の学生さんがレポーターとなり、様々な農業現場を発信します。
今回のレポーターは2年生の大場慶久君。自身の就農予定地となる地域の課題解決のヒントを得るため、NPO法人アサザ基金 代表 飯島博さん(下写真)にお話を伺いました。


(※当社発行の農業フリーペーパー「VOICE」41号/2017年冬号より転載)

環境を基点に地域を創る

 日本農業経営大学校の大場慶久です。私の実家は宮城県栗原市の「伊豆沼・内沼」のほとりで稲作をしており、卒業後は親元に就農し経営を拡大させていく予定です。
 しかし、経営を継続していく上で大きな課題があります。それは、水田へ用水を供給している伊豆沼・内沼の自然環境が悪化していることです。このまま沼の環境悪化が進めば、地域全体で農業ができなくなってしまう可能性が大いにあります。そこで、私は就農後、農業を通じて環境再生を行うことができる地域農業のモデルを作りたいと思っています。
 そのヒントを得るため、今回は茨城県の南部に位置する霞ヶ浦(日本で2番目に大きい湖)の環境再生を基点に持続的な地域社会の創造に取り組まれているNPO法人アサザ基金 代表 飯島博さんにお話を伺いました。


 同法人は、霞ヶ浦のコンクリート護岸工事により湖の環境が悪化した影響で絶滅に瀕していたアサザ(水草)を救うため1995年から始まった「アサザプロジェクト」をきっかけに、1999年に設立されました。具体的には、100年後に野生に復帰したトキが湖面に舞うことを目標に、霞ヶ浦流域の自然と人間の共生の実現に向けて、アサザの植え付け、水源地の再生活動を行っています。地域の小中学校と連携し環境学習として取組んでいる点もユニークで、これまで延べ29万人の市民や200校以上の小中学校が参加されているそうです。

 このプロジェクトは、環境や福祉、産業、教育などの従来の分野間の壁を越えたネットワークを地域全体で構築している点に特徴があると感じました。これを飯島さんは「社会の壁を溶かし膜に変える」と表現され、「従来の組織の壁を壊して取り払う組織改革から、組織間の仕切りは残しつつ外部とのコミュニケーションを促し、相互作用を生み出し、そこから生まれる発想が環境再生や持続可能な地域を実現するために必要である」と主張されました。

 同法人の幅広い活動の中でも特に印象的だったのは、谷津田(やつだ)の再生プロジェクトです。谷津田とは、谷地にある田んぼのことです。霞ヶ浦・北浦流域には大きな川や山地がないため谷津田が重要な水源地となっていますが(※)、条件不利地等の理由から耕作放棄も進んでいます。その荒廃した谷津田を再生するため、企業と連携して、米作りと森作りに取組んでいます。一例として、2003年からNECと協業し、NECの本業であるIT分野(気象情報を計測・蓄積・配信するネットワークセンサー)を霞ヶ浦の自然再生に活かしたり、復田・米作り・里山整備・地域の酒蔵と連携した地酒造り等に取組むことにより新しい循環を生み出し持続可能な社会システムを得るなど、社会的価値の創出やビジネスモデルを構築しています。

 2016年1月には10年以上取り組んでいた水源地再生活動を本格化させていくために「株式会社・新しい風さとやま」を設立しました。水源地の水田での高付加価値なお米の生産と加工及びそれらのブランディングに、アサザプロジェクトで構築したネットワークを活用し、農業と社会の様々な分野が結びつく多様なビジネスモデルを展開する計画だそうです。農業の多面的機能が注目されるなか、生産から販売までのプロセス全体で環境再生を行う仕組みを作ることで、消費すればするほど湖の環境再生が進む構造が完成しているのではないかと思います。

 取材を終えて、地域の課題を解決するには、いかにネットワークの構築ができるかが重要になってくることを学ぶことができました。農業の分野だけで解決できる問題は限られており、全てを一部の担い手が解決することは不可能です。地域内の様々な課題同士をぶつけ、専門分野や産業区分を越えた連携を図ることで、課題を解決する仕組みを作ることが重要だと感じました。とりわけ、教育分野との連携は持続可能な地域を創造する上で大きな役割を果たすと感じました。なぜなら、教育は未来の地域づくりと言えるからです。地域内の資源を結びつけ、価値を生み出し問題を解決する創造的な能力を子供たちから引き出すことができるからです。このような発想力や、創造力を持つ子どもたちが次の世代で地域のネットワークの中心となり、豊かな地域社会を作っていくでしょう。

飯島代表(左から2番目)と、私(右端)および取材に同行した日本農業経営大学校の同期2名。手には谷津田の再生プロジェクトで作られた日本酒を持っている。

(※)公式サイトより引用 http://www.asaza.jp/activity/yatsuda2/



※記載情報は取材当時のものです。
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