株式会社ローソン 農業推進部

近年、異業種から農業へ参入する企業が増えています。
その実態を探るべく、今回はコンビニから農業へ参入した企業の1つ、株式会社ローソン 商品本部 農業推進部 部長 下澤さんに農業参入のきっかけや展望について伺いました。


△ 下澤 洋さん
東京農業大学卒業後、種苗会社へ入社。その後、卸会社へ転職した後、(株)ローソンへ転職。現在、農業推進部の部長を務める。

(※当社発行の農業フリーペーパー「VOICE」41号/2017年冬号より転載)

農業×異業種

―農業参入のきっかけを教えてください。
 参入準備は2009年から始まりました。コンビニエンスストアで生鮮品があまり売られていなかった当時、『生鮮品販売を展開するためには、生産現場を知らなければならない』と当時の社長・新浪剛史氏が考え、すぐに動き始め、2010年6月には第1号農場「ローソンファーム千葉」が立ち上がりました。
 企業の農業進出には様々な考え方や方法がありますが、当社の大きな特徴は、地域の農業者と手を組み展開していく点です。具体的には、農業生産は農業者が担い、生産された農産物の商品化や売り場への展開、いわゆるマーチャンダイジングを当社が担う、というように機能を分化しています。また、農業者と資本を出し合い、「ローソンファーム」という合弁会社を設立する点も大きな特徴です。あくまで農業者が主体なので、資本構成は農業者が75%、当社および協力企業が25%となっていますが、各農場の社長には役員報酬を支給しますし、我々も事業を黒字化できるよう事業内容等を協議しながら計画を立てていきます。
 なお、現在は全国に23ヶ所の農場があります。当初は「生鮮部」(生鮮品の販売部門)が兼任していたのですが、規模拡大につれ「専門的な知識を持つ人材が必要だ」と判断し、3年程前にここ「農業推進部」ができました。

―具体的にどのようなお仕事をされていますか?
 農産物の安定供給や過不足調整、栽培計画の立案、商品開発部門との調整など、各ファームの生産者や社内の他部署との調整などが大きな仕事です。  例えば、生産される農産物のうち、約半分は生鮮品、約半分は加工用(カット野菜、サラダ、惣菜など)に使われるのですが、消費者ニーズにあわせ生産品目も変わっていきます。最近では、パクチー人気にあわせパクチー生産を始めたり、年々売り上げが伸びているカット野菜用のキャベツ生産を拡大するなど、栽培計画を変更しました。なかでも最も難しいのが過不足調整です。天候に左右される農業にとって計画通り生産するのは難しく、過剰な時はあの手この手で販売し、足りないときは様々なネットワークで集めます。具体的な手法は企業秘密です。

―今後の展望を教えてください。
 農村地域の活性化と農業の6次産業化の2点を推進することで、流通革命を起こしたいと考えています。
 まず、「新規で農業を始めるのは難しい」と思われている中でローソンファームが人材の受け皿になることは地域活性化の一端になると考えられます。また、他社よりも安く商品を提供するために、生産から加工、販売までを同一圏内で行い無駄を省くことを目指しています。実際に「ローソンファーム鳥取」では、大根の生産からおでん用の加工までを産地で行うことにより、他社よりも安くおでんの大根を販売することができました。加えて、GAPやHACCPといった第三者認証を活用することにより、お客様に安心・安全な商品を届けるサプライチェーンを構築しています。流通革命は、農家・工場・お客様など皆にメリットを生み出すのです。

(左)農場の様子 (右)ローソンファーム千葉 篠塚社長

―壮大ですね!そうした仕事に携わりたいと考える学生もいるかと思うのですが、どのようなスキルが必要だと思われますか?
 農業の知識もさることながら、熱意を持った方ですね。加えて、農家さんや商品開発部の担当者など様々な方と連携を取ることが多いので、コミュニケーション能力がないと大変だと思います。なお、当社に新卒で入社した場合は、どんなにやりたいことがあっても店舗担当から入るのがルールです。様々な経験や見方が融合していくことは会社にとってもいいことですし、本人の経験としても活きてくると思います。

―最後に、学生に一言お願いします!
 自分の可能性を限定しない方がいい、と伝えたいですね。「農業界で働きたい」と考えている方も、他分野への興味や方向性に合っているものがあれば熱意を持って取組んでほしい。若いうちに色々な経験をすることは重要ですから。

リンク

 ローソンファーム
⇒ http://www.lawson.co.jp/recommend/lawsonfarm/


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