「ホップが変える、地域と日本農業」
キリン株式会社

「ホップが日本の農業に与える影響はとても大きい。産地や農業者との関わりを通じて、そう思うようになりました」。そう話すのは、キリン株式会社 CSV戦略部 浅井さん。今回はホップの一大産地である岩手県遠野市と同社が進めるまちづくりプロジェクト「TONO BEER EXPERIENCE」について、浅井さんと同部署の四居さんにお話を伺いました。


△四居さん(左) と 浅井さん(右)
(※当社発行の農業フリーペーパー「VOICE」39号/2017年夏号より転載)

ホップが変える、地域と日本農業。

―ホップはビール原料の一つなんですね。
 そうです。ホップはビールの香りを決める重要な原料です。当社では日本で生産されるホップの約70%を使用しており、遠野市とは54年前から契約栽培をしています。日本産ホップは生産量が少ないのですが、輸入品と違いフレッシュですし、醸造家からは「日本らしい香りがする」と高評価をいただいています。何より、日本産ホップの可能性はとても高いと感じています。

―そのご縁から、遠野のまちづくりプロジェクト「TONO BEER EXPERIENCE」が始まったのですか?
 実はそれより前から、遠野市との地域活性の取組みは始まっていました。具体的には、平成19年から始めた「TK(遠野×キリン)プロジェクト」という取組みで、遠野市の宝であるホップやそのビールにあう遠野産の様々な食材をPRするというものです。
 その次のステージが「TONO BEER EXPERIENCE」です。これは、地域活性化を目指す遠野市が、地元の資源であるホップの魅力を最大限に活用して未来のまちづくりに取り組むというもので、〝「ホップの里」から「ビールの里」へ〟をテーマに活動しています。現地へ赴くことも多いですよ。

―実際に現地の方々と接する中で、どのようなことが課題だと感じていますか?
 一番の課題は担い手不足ですね。遠野市では、約40年前には239戸あったホップ農家が、現在では35戸にまで減少しました。これは我々の予測をはるかに超えるスピードです。


△ ホップは多年草のつる性植物で、高さは10メートル前後まで生長します。

 しかし、ある出来事が一気に事態を変えました。2008年に神奈川県から移住し新規就農された吉田さんの存在です。吉田さんは自社農園「遠野アサヒ農園」にて、季節の野菜やスペインで親しまれているビールのおつまみ野菜「パドロン」を中心に生産されており、様々な縁で当社と繋がりました。2015年からはホップ栽培もされています。吉田さんのように、遠野で新規就農した若者が地域の資源であるホップを紡いでいく動きは、地域にとっても当社にとっても、非常に大きな刺激になっています。

 また、吉田さんがホップ生産を始めるタイミングで、東京で開催された「新・農業人フェア」という就農希望者のための合同説明会に出展しました。その時は、遠野市役所の方、ホップ農協の方、吉田さん、当社から浅井が参加しました。ブースへ来た方には「お願いだからホップ農家になってください」という話はせず、「僕たちはビールの里に向かってます。その一員になってください」という話をすると、新規就農者が集まったんです! よくよく考えたら、農業の「川上」から「川下」に関わる人物が全員集まっていたことや、「生産したホップはキリンが100%買い取ります」という販路の確保、住居など生活面のアドバイスがなされたこと、そして何より、コミュニティへ 入ってすぐに友達ができるという環境があったことが大きかったようです。結果論ですが、地域農業を活性させていく上では、その場所にしかない資源を活用したり、農業の未来を見据えたまちづくりやグランドデザインの筋が通っていることが重要だと感じました。

―最後に、学生に一言お願いします!
(四居さん)
 実はこの担当になるまで、「農業は辛くて大変な仕事だ」と思っていました。しかし今は、すごく夢がある仕事だと思っています。農業は農産物の生産だけでなく、地域活性化に携わったり、農業を基幹産業とする地域のプロ デュースまでできる、チャンスの多い業界だと思います。

(浅井さん)
 「ビールの里」が自他共に認められるブランドになった時、遠野の農業自体の付加価値をあげられるのではないかと思っています。農業を軸にした地域活性をしたい方にも、就農を目指している方にも、「ビールの里をつくる仲間になりませんか!?」と言いたいですね。ホップはもっと面白くなりますよ!


リンク

 キリンが応援する遠野のまちづくり 「TONO BEER EXPERIENCE」
⇒ http://www.kirin.co.jp/csv/connection/tonobeerexperience/


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