「酪農のIT化。その本質は、牛の幸せと人づくり」
有限会社 竹下牧場

酪農・畜産向けクラウドサービスに特化したITベンチャー・株式会社ファームノート。今回は、そのシステムを導入されている酪農経営者・有限会社竹下牧場 社長 竹下耕介さんに、導入のきっかけや酪農業への想いなどを伺いました。

△竹下社長。牛の首には、活動情報を自動収集する装置「Farmnote Color」がつけられている。
(※当社発行の農業フリーペーパー「VOICE」38号/2017年春号より転載)

酪農のIT化。その本質は、牛の幸せと人づくり

―「Farmnote」を導入されたきっかけを教えてください。
 日本全体の人口が減るなかで、酪農に限らず、どの業界も働き手が減っていくと予測されます。働き手が減っても生産性を上げるためには新しい知恵や知識が必要です。その一つとして「Farmnote」は非常に魅力的でした。
 ファームノートの社長とは知人の紹介で出会いましたが、「酪農に貢献したい」という本気度を感じ、開発段階から交流しています。なお、私はパソコンなどの機器が超不得意で、最近エクセルを使い始めたくらいです(笑)。社長と出会った頃は、たまたまiPadとiPhoneを使い始めてクラウドでのデータ共有や情報ストックの便利さを知った頃で、タイミングもちょうど良かったんです。

―機器が苦手というのは意外です…!実際に導入されていかがですか?
 メリットはいろいろありますよ。一つは、それまで感覚で捉えていたものが数値化されたことです。社員との会話も曖昧だった内容から具体化された内容に変わっていきました。
 特に画期的だったのは、牛一頭一頭のカルテがいつでもどこでも確認できるようになったことです。それまでは、人工授精や病気、治療などの経歴は、関係機関が異なることもあり、バラバラに管理されていました。加えて当社には合計330頭もの牛がいるので、一頭一頭を紙ベースで管理していると莫大な量になります。それら全てが「Farmnote」に集約されるようになり、かなり便利になりました。また、獣医師や飼料会社など、当社の関係機関であればタイムリーにデータ共有できるのもメリットです。
 データ入力は社員が行うので、全員にスマホを支給しています。きちんと入力しないとデータの精度が落ちるので業務時間内に入力できる体制にしました。加えて、それらのデータによって社員 一人ひとりが牛の病気の兆候や発情の予測などをしやすくなったと思います。

△「Farmnote」は、パソコン、スマートフォン、タブレット、いずれからでも使用でき、いつでもどこでも牛群の情報を管理・記録・分析できる。

―IT化が進み便利になる一方、人間の仕事がなくなったり、ITがなければ適切な判断ができない酪農家が増えるのではないかという懸念も考えられますが、その点はどのように思われますか?
 まず、人間の仕事がなくなることはないと思います。例えば、それまでしていた作業が機械やAIが行うと、その分、新たな時間が生まれますよね?その時間でより本質的な仕事ができると思います。それに、人間は創造していく生き物だから、農業をより良くするために新たなことを創造していくと思います。
 また、ITは農業技術の難しさのハードルをどんどん下げていくと思いますが、それは『農業者のレベルを下げる』ということではなく、『短期間で無理せずレベルの高い農業者をつくること』に繋がります。例えば、それまで5年かかっていた技術習得が1年に短縮できるようなイメージです。今後どんどん働き手が減っていくことを考えると、技術習得までの年数を早めることは重要な課題であり、その視点はどの産業にも役立つと思います。いくらITが進化しても、先人が開拓してきたこの地を守っていくのも、農業を守っていくのも、人ですから。

―人に重きを置いているのですね!酪農や牛にはどのような想いがありますか?
 牛の価値はものすごく無限大です。 一つは、牛は人間が食べられない草を食べて、人間が食べられるように変換して乳を出すこと。もう一つは、乳を出すために新しい生命を誕生させること。つまり酪農は「生み出す産業」なんです。
 それに、酪農家は牛に生かされています。だからこそ、牛には幸せであってほしい。私が考える牛の幸せとは、牛が1日でも長く生きられること。もちろん経済動物なので「経済動物として当社にいる間」となりますが、牛が病気やストレスにかからず、満足に生きられる育成や環境づくりを心掛けています。

―最後に、学生に一言お願いします!
 農業は、生き物や自然を相手にする、一生飽きない面白い仕事!だからこそ人間自体が面白くないと、IT技術や AIに負けると思います。だからこそ、いつまでも「創造者」であってほしい。言い方を変えると「バカ者」、泥臭く言うと「開拓者」であってほしいと思います。

竹下さんが手にされているのは「Farmnote Color」。持ってみると、ずっしり重い。よく見るとセンサーのほかに重りが付いている。この重りがあることでセンサーが回らず、牛の首の適正な位置に固定されるそうだ。

リンク:参考サイト

・株式会社ファームノート 導入事例「有限会社 竹下牧場 竹下 耕介 様」
 http://farmnote.jp/case/takeshita.html


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