「実家は農家じゃないけど、農業を仕事にしたい!」と考える学生さんも増えているのではないでしょうか。特に、非農家の方(家業が農家でない方)で農業をしたい場合、まずは農業法人で経験を積まれることをお勧めします!そこで、農業法人へ就職し農業をされている先輩方に、入社のきっかけや仕事内容、農業の魅力などお聞きしました。
(※当社発行の農業フリーペーパー「VOICE」34号/2016年春号より転載)

大規模農業で集落を守る! 有限会社ジェイ・ウィングファーム

土地利用型農業で集落を守る有限会社ジェイ・ウィングファーム。
今回は、代表取締役・牧秀宣さん、取締役・越智髙徳さん、齋藤碌さん、大森陽平さん、村上桂さんにお話を伺いしました。


△ 左から、村上さん(34)、大森さん(33)、牧社長(64)、越智取締役(65)、齋藤さん(35)
後方には西日本最高峰の石鎚山がそびえる

失敗を恐れず、農業に飛び込んでほしい!

―今回は対談形式でお話を伺いたいと思います。
まずは、若手スタッフの皆さんが、こちらへ就職を決めたきっかけについて教えてください。

村上さん
 就職して2年半ほどです。大阪工業大学卒業後、大阪で働いていたのですが、あるテレビ番組の影響で農業に興味を持ちました。最初は「農業もやってみたいな」くらいのレベルだったのですが、地元・愛媛県の知人の紹介もあり、この会社に転職しました。

大森さん
 僕は就職して5年半ほど経ちます。大阪経済大学を卒業して京都で働いていたのですが、「いずれは故郷に帰ろう」と思っており、結婚するタイミングで、ここ東温市に帰ってきました。帰ってから仕事先を探し、入社しました。

齋藤さん
 ここには大学時代から来ているので、もう15年以上の繋がりです。理屈ばっかりのキャンパスライフが面白くなくてね…いろいろ飢えてたんですよ。そのとき、社長と越智さんの話を聞いて、ここでバイトをさせてもらいました。たしか大学2年生の頃です。社長はじめ、農繁期に手伝いに来る方々もすごく勢いのある人達で、皆の共通点が「アメリカで2年間農業研修をしている」ということだったので、僕も2年間アメリカで農業研修をしました。そして帰国後に入社したので、社員としては10年くらいです。

―農業をしていて「ここが良い!」と思うことを教えてください。
村上さん
 収穫の時ですね。今まさにキャベツを収穫しているのですが、「今まで作ってきたものがやっと採れる!」という時は嬉しいですね。

―何時頃から収穫をするのですか?
村上さん
 基本的には、8時に出社してから準備をするので、8時半頃から始め、夕方頃まで収穫作業をします。現場作業はこの3名のほか、パートさんや年配の方も加わります。

―数名で作業をされているのですね。大森さん、斎藤さんは、どういう時に「ここが良い!」と思われますか?
大森さん
 僕は、外で仕事をするという点に魅力を感じています。例えば先日、猛吹雪の中でキャベツを収穫していました。その時、一瞬雲が切れてお日様がパーッと出る時があったんですよ。その時、相当気持ち良かったんですね。冗談で「キャベツの気持ちが少し分かった気がします」と言ったんですけど、意外と冗談ではなくて、「僕も生き物なんやな」って実感しました。他にも、猛吹雪の中で皆で暖をとりながら休憩してお茶を飲む時や、真夏のクソ暑いときに冷たい麦茶を飲む時など、外の仕事だからこそ味わえる爽快感が良いなぁと思います。

齋藤さん
 僕は「儲けてる」という手応えがないと面白くないですね。中間管理職の立場なので「お日様浴びて気持ち良い」とか言ってたら先がない、というのもありますが(笑)。農業はものづくりなので、作物が商品になっていく過程では、気候を想定して戦略を立てるとか、色々なことがありますよ。作物はその結果できるわけで、良いものをお客様に届けることで結果的に儲けにつながります。

―立場や経験値によって考え方も異なりますね。皆さんの今後の目標についても教えてください!
村上さん
 今はまだ指示を受けて動いている状況ですが、最終的には指示を受けなくても、自分の考えで動けるようになりたいですね。

大森さん
 僕も村上と一緒で、社員として一人前になりたいと思っています。あと、実は実家にも農地がありますが、今は親戚に貸しています。僕は親が転勤族で実家で生まれ育っていない分、まずは地元の人に僕の存在を認めてもらいたいと思っています。そしてゆくゆくは、その農地で農業をしたいと思っています。

齋藤さん
 短期的な目標は生産高を上げること。長期的には質実ともにスキルを上げ、農業の代表格になることです。今は社長と越智さんがその道を切り開いています。僕は農業という「総合産業」の中ではまだまだなので、今は実力を付けるのみです。

―皆さんが活き活きと働けるのもこの会社があるからですが、牧社長はどのような想いで若者を受入れていますか?
牧さん
 農業をあまりに知らなすぎる人が多いので、その場所を与えてあげる。それも我々の仕事だと思っています。農業は作物を作るだけでなく、集落を維持する産業でもある。集落の構造、地域の状況、環境保全の在り方など、実際に来てみて感じて学ぶことの方が多い。言葉だけだと誤解が多いからね。



齋藤さん
 僕は「アグリカルチャー」は「文化を耕す」って解釈した方がいいんじゃないかなと思っています。農業で儲けることはもちろん大事なんですが、単純なビジネスではないんですよね。集落には祭りや水路清掃など様々なことがありますが、それらに集落の個々人が携わることで集落環境が維持されています。
 それに、人は食べ物が満足にあると他人にも優しくなれます。加えて、農業があって食べるものがあるから、二次産業も三次産業も成り立ちます。国外に目を向けると、フランスは農業に対する補助率が日本の数倍もあります。それは、国民が「お百姓さんが私たちの生命や財産、環境を守ってくれている」という意識が高いから。他にも日本より補助率が高い国は沢山あります。日本人は国策を含め、もっと農業の在り方を考えるべきだと思う。農業はすごく壮大な産業なんです。

―目の向け方一つで、農業は様々な形に変化しますね!最後に、学生へメッセージをお願いします。
牧さん
 農業はやってみんと分からん。それに、失敗が多いほど早く到達点に着く。失敗を恐れず、やってみること!

越智さん
 僕はみかん農家に産まれ育ち就農を考えていましたが、昭和40年頃にみかん産業がダメになり、一般企業に就職しました。それが20歳の頃です。就職して8年後くらいに牧さんと出会い、一緒に農業をすることになりました。それから35年ほど経ちます。その間、いろんな会議に出たり、色んな人にもまれてきました。それがなかったら、小さい人間で終わっていたと思う。何があっても逃げずに頑張ってほしいですね。

大森さん
 社長が言う「失敗を恐れるあまり成長できない」という部類に、正に僕も入っています(笑)。性格は急に変えることができませんが、上を目指す人達の意見を聞きながら働くことで少しずつ変わっていけると思います。農業をやりたいと思ったら、とにかく長靴を持って農業法人の門を叩き、体験すること!

齋藤さん
 こじんまりしてる間があったら、草ひけって話ですよ。

村上さん
 そうですよね。イメージだけで敬遠せず、まずは体験してほしい。そして、農業で働く気持ちよさを味わってほしいと思います。


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